─ それができていない。
福川 残念ながらそうですね。その意味で、私はこれから「第三の改革」が必要だと思っています。
「第一の改革」は黒船の襲来と明治維新、「第二の改革」は第二次世界大戦後の国づくり、「第三の改革」は平成以降の停滞の30年をどう克服するかです。
私は第三の改革には「グローバリズム」と「イノベーション」が必要です。そして「文化」が大事だと考えます。この3つをどうするのかが「第三の改革」で問われている。
日本はどうすれば真のグローバリズムに貢献できるかが問われているということです。
物事には良くなるケースと悪くなるケースと両方ありますが、最悪のケースを想定して準備をしながら、最善のケースを目指して改革に取り組まなければいけない。
今回の新型コロナウイルスへの対応を見ても、ワクチンの普及、医療体制の整備でも最悪の事態を想定していない。できれば、良い方を期待していたのではないかと思います。でも、それでは社会の運営はできません。
─ 問題の根底は仕組みなのか、リーダーの意識の低さか、国民の意識の低さですか?
福川 リーダーも問題ですが、組織というのはリーダー1人では成り立たない。今は、政府全体の集約ができていないのが問題だと思います。
─ 総理が意識を持てば、改革はできる?
福川 できると思いますし、行政からリードすることもできるはずです。けれども、今はそれをやろうとする空気がない。
─ 空気すら出てこないのは、なぜだと考えますか?
福川 「第二の改革」は成功し、日本は世界第二の経済大国になりました。わたしが通産省を辞める頃には、日本が世界第一の経済大国になるかもしれないという思いもありました。
表向きには議論はしていませんが、そうなったとき、日本はどう対応すべきか、それを想定していました。
いずれにせよ、絶えず、先がどうなるかを見て、行政をする、政治をすることが大事だと思います。あの頃は、自民党にも、そう考えて行動する政治家が何人かいました。
─ かつての政治家は国のビジョンを語りました。なぜ今、ビジョンを語る政治家がいなくなったのでしょうか?
福川 それは平成以降の30年近い停滞の結果です。人間、停滞期に入ったら、意識も発想も停滞するんです。
平成の30年というのは、日本が下降する時期でした。1989年が平成元年で、それ以降、日本はバブルが崩壊し、停滞に入ってしまいます。
それは、経済政策の誤りがあったと思います。