2022-03-04

日本が欧州にLNG融通へ 米欧の要請に応じ、異例の決定

ロシアからの影響を懸念する声も



 

 政府は日本が輸入する液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通する方針を決めた。ロシアによるウクライナ侵攻が現実となる直前、米欧からの要請に呼応し、異例の決定に踏み切った。欧州が消費する天然ガスの多くは、パイプラインなどを通じロシアから陸路で供給されている。侵攻後はロシアが欧州へのガス供給を止める恐れが高い。このため、海路によるルートを確保し、実際に供給が途絶える事態に備える。

 日本政府に対しては2月初旬にバイデン政権から正式な打診があった。日本はLNGの世界有数の輸入国で、自給率も極めて低いことから、当初は慎重に検討を進めていた。しかし、打診からわずか1週間後、萩生田光一経済産業相が欧州連合(EU)のフロア駐日大使、米国のエマニュエル駐日大使とそれぞれ会談し、融通に協力する意思を伝えた。

 LNGは石油とは違い、国内での備蓄は行っていない。エネルギー企業を中心に、各民間企業が数週間分の在庫を保有しているにすぎない。このため、政府は大量の在庫や権益を保有する大企業を対象に、融通を要請。調整の結果、大手商社などが権益を保有し、売却先が決まっていないLNGの一部を欧州に売却することが決まった。要請に基づき売却先を変更してもらったLNG運搬船数隻が、3月に欧州に到着する見込みという。1隻当たりの積載量は7万トン程度で、少なくとも数十トンが融通されることになる。

 LNGに関しては、日本もロシアからの輸入国だ。通常、売却先については長期契約を結んでいるケースが多いとはいえ、日本が欧州への融通を決めれば、ロシアから日本へのLNG輸入に何らかの影響が及ぶ可能性を懸念する声もあった。

 ただ、資源エネルギー庁によると、日本のLNG輸入量は2020年実績で約7450万トン。このうち豪州からの輸入が39.1%、中東全体が16.4%なのに対し、ロシアは8.2%。このため、最悪の事態を想定しても、危機的な状況は回避できると判断したとみられ、自民党内からは「米国との協調姿勢を示すには、致し方ない判断」(幹部)との声も聞かれる。

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