2022-03-09

【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 元防衛大臣・森本敏

NATOの再定義を



 ―― 考えられる落としどころというのはどういう点になりますか。

 森本 双方がどこで妥協できるかというと、一つは、ウクライナが当分の間、NATOに加盟しないという約束をする。そしてウクライナ東部のロシア系の人に暴力を振るわないことをウクライナ側が保証し、これを検証する第三者(例えば、ロシア人を含む欧州安保協力機構=OSCE)の監視措置を設ける。もう一つは、ウクライナに供与した兵器のうち重攻撃兵器だけは撤去する。それをこちらが提案し、これらの見返りにロシア軍がウクライナ領内から撤退するということだと思います。

 ロシア軍がどうしても撤退しない場合には東部2州だけロシア側に割譲するということはあり得ますが、ウクライナ人はこれを認めないでしょう。そうなると交渉は決裂します。

 いずれにしても、ロシア側の不信感は大きく、歴史的な経緯もあって、双方は譲り合えない状態ですが、そうなると紛争が長引き、人道上の問題が深刻になり、国際世論も湧き上がってくるため、双方ともますます妥協が難しくなる。しかし、軍事力を行使して強硬な対応をとり、核兵器で脅迫するといったロシアの対応に応じることは欧米の敗北となり、妥協できないということになります。

 このようにして、お互いに譲り合わない状況が続くと、事態が深刻化して紛争が長期化し、一般人だけが苦しむことになるわけです。これは何としても防がなければならない。


Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事