2022-03-14

【政界】頼みの連合が岸田政権にシフト 参院選前に混迷を深める立憲民主党

イラスト・山田紳



組合員が自民支持

 連合の基本方針にはもう一つのポイントがある。参院選の選挙区選挙で「目的や基本政策が大きく異なる政党等と連携・協力する候補者は推薦しない」と明記したことだ。素案では「目的が大きく異なる政党や団体等と~」だったが、「基本政策」を加えた。これは何を意味するのか。

 芳野は2月17日の記者会見でこの項目が「共産党を念頭に置いている」と改めて説明した。しかし、立憲民主党に近い連合関係者は「『基本政策』を入れたのは日本維新の会との連携を否定するためだ」と明かす。

 国民民主党代表の玉木雄一郎は衆院選後、共産党を含む野党共闘路線と決別し、維新や、東京都知事の小池百合子が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」との連携を探ってきた。ただ、維新の政策や主張は本来、労組とは相いれない。「共産だけでなく維新もだめ」という基本方針の修正は、維新が特に敵視する官公労(立憲系)による巻き返しとみられる。

 参院選では改選数1の「1人区」(計32選挙区)の行方が全体の勝敗を左右する。野党は16年と19年に1人区で共闘を進めた
ものの、いずれも自民党に大きく負け越した。

 今回、自民党は公明党との「相互推薦」問題がこじれて盤石とは言えない状況だが、それでも空中分解寸前の野党陣営に比べたら傷は浅い。このままだと1人区で野党はほぼ総崩れになる可能性がある。

 19年参院選の後、連合が地方組織の組合員を対象に実施した「第7回政治アンケート調査」によると、政党支持率は合流前の旧立憲民主党と旧国民民主党を足しても34・9%で、「支持政党なし」の36・0%を下回った。自民党は20・8%に伸びた。野党が政権を担い得る勢力になることを期待するとの回答は「どちらかと言えば」を含めても60・9%。野党の支持団体としてはさびしい数字だ。

 組織率が2割に満たず、しかも組合員の保守化が進む中で、連合は組織防衛に躍起になっている。昨年の衆院選前には、トヨタ自動車グループの労組でつくる全トヨタ労連が支援してきた無所属の古本伸一郎(当選6回)が愛知11区からの立候補を断念し、結果的に自民党候補の圧勝をアシストとした。

 脱炭素が世界の潮流になり、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の取り組みを労使一体で進めるために、現実路線を取り始めたと言っていい。かつて「民主党王国」と呼ばれた愛知での異変は時代の変化を象徴する出来事だった。

 連合は参院選比例代表に産別の組織内候補9人(立憲民主党5人、国民民主党4人)を擁立する予定だ。比例名簿に登載された候補者が個人名票の多い順に当選する非拘束名簿式のもと、19年参院選では、旧立憲は比例で獲得した8議席中5議席、旧国民民主は3議席すべてを労組出身者が占めた。

 連合は組織内候補を当選させることを「働く仲間を代表する連合の社会的な役割」と位置付ける。ただ、19年に旧国民民主党から比例に立候補した電機連合出身の現職(当時)が19万票超を集めながら次点に甘んじたように、擁立した政党が不振だと当選ラインに届かない。ちなみに自民党の最下位当選者は約13万票だった。

【厚生労働省】「コロナ対応」最優先で感染症法改正案の提出見送り

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事