2022-03-24

SMBC日興証券相場操縦事件の教訓 『稼ぐ人達』に組織が引きずられた理由

近藤雄一郎・SMBC日興証券社長



逮捕されたのは外資系出身者たち


 また、SMBC日興証券は09年に三井住友フィナンシャルグループが買収する以前、リテール(個人向け業務)の会社となっていたことも要因となっている可能性がある。ホールセール(法人向け業務)は当時の親会社・米シティグループの意向で別会社となっていた。

 そのため、改めて総合証券会社となるために、ホールセール部門の人員を補強する必要があった。そこで入社してきたのが外資系の人材。今回逮捕されたメンバーは皆、外資系出身。ヒル氏は元UBS証券で、同氏を知る複数の業界関係者は「アグレッシブな人」、「とにかく『稼ぐ人』」と評する。

 また、国内証券会社の間からは、これまでのブロックオファー取引に関して「外資系証券会社は以前から強かった」という声が漏れる。低い割引率ですぐに顧客を獲得してくる姿を見て、「これでは勝てない」と思わされたというのだ。日系証券にない、何か別の手法があるのでは? と思っていたという。

 今回のSMBC日興証券の外資系出身メンバーが、そうしたノウハウを持ってブロックオファーなどの取引を成功させ、実績を上げていたのだとしたら、他部門からの牽制が効きづらくなっていた可能性はある。そうであれば、まさに組織が「引きずられた」形。

 このブロックオファーを巡って相場操縦の疑いをかけられたのは日本で初めてのこと。相場操縦そのもので疑いを持たれるのは08年の丸八証券以来。 

 経営責任について問われた近藤氏は「事態を正確に認識し、改善策を講じる。信頼回復に全力で努めることが私の責任」と答えた。

 金融庁は「まだ捜査中ではあるが、逮捕されたという事実については厳しい目で見ざるを得ない。経営責任については事案の内容を精査して、問題となった行為の重大性、悪質性で判断する」としている。

 やはり今回は組織体制、内部管理体制など、企業をどう形づくるかというガバナンスの部分に甘さがあったと言わざるを得ない。その上で、市場からの信頼を回復するための施策を打てるかどうかが問われている。

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