2022-05-16

【セクハラ訴訟を体験して】龍角散社長が語る危機管理

藤井隆太・龍角散社長

 彼女が言うには「中国ビジネスを巡る意見対立から私を無力化することが目的であろう」とのことでした。もし本当であれば、善良な女性社員を利用して自社の社長を陥れようとした前代未聞な手段となります。

 これは慎重に進める必要があると判断し、当社と利害関係を有しない外部の大手法律事務所による同社員の話の真偽を含めて、厳正な調査を実施しました。その結果は、セクハラは確認できなかったというものでした。もともと被害者とされる本人が「違う」と言っていることの信憑性も認定され、当然の結果です。

 社員としてももちろんですが、法務担当部長の立場でありながら極めて不適切な言動です。しかも善良な女性社員に同社員の考えとは真逆の申告をさせようとするなど、許しがたいことであり、厳正な調査結果により、事実関係が確認された後、長年勤務したということも考え、普通解雇として退職金も支払いました。しかしその後、地位の確認を求めて提訴してきたのです。

 そして裁判では、原告がセクハラ被害者と主張する当事者の女性社員が本人の強い希望で病身を押して出廷し、宣誓の上、本人の意思に反し、セクハラを受けたと言うように原告から強要されたと明確に証言しました。忘年会に参加していた他の社員も同様の証言でした。

 しかも、忘年会に同席していて原告にセクハラがあったと最初に連絡した原告の姉までもが「最初から社長の行為をセクハラだとは言っていない」などと証言する始末。原告にしても女性社員への不適切な対応の理由を裁判長に問われて、最後には社長と対立している姉のことが心配だったとの趣旨のことを述べています。

 重要証拠として提出された法務担当部長である原告の携帯メール(会社所有)には姉とのやりとりで、私に対する誹謗中傷や中国ビジネスを阻止せんがための画策、当該女性がセクハラ証言を拒んだため、他の女性社員にまで強要しようとしたと思われる交信が記録されており、私も愕然としました。私を陥れようとした事実は明確になったと思いました。

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