2022-05-16

【セクハラ訴訟を体験して】龍角散社長が語る危機管理

藤井隆太・龍角散社長



 原告がセクハラ被害者と主張している女性社員は法廷で証言することを強く希望していましたが、途中から病気で予定されていた証人尋問期日に出廷できなくなりました。しかし、御本人は法廷で証言できなくなったら困るということで、顧問弁護士の立ち合いの下、病院で撮影したビデオを残していたのです。

 そこでは「姉妹が会社での立場が危うくなり、何とか社長の弱点を見つけようとしているということが分かり、非常に恐ろしさを感じました。本来であれば、セクハラだったと言って欲しいという依頼に対して、私はセクハラだったと感じていないので、きっぱりとそのような依頼があったとしても断らなければいけないところ、人としての未熟さ、弱さ、これを断ってしまえば自分が会社にいられなくなるということに恐怖を覚え、逆らうことができませんでした」と供述しています。

 結果的に、裁判の結末は和解となりましたが、これは裁判所から強く勧められたことと、社内での姉妹の行き過ぎた行動、そして訴訟に嫌気を持った多くの社員らの気持ちを考慮し、早期決着を重視したこと、原告とはいえ、元社員の再就職も考慮し、早期に和解に応じるべきとの判断でした。

 過去、どれほど会社に貢献したとしても、経営者と方針が合わないからといって、善良な女性社員を利用した妨害工作など、到底許されることではありません。

 当社は今まで年齢・国籍・性別を問わず、臨機応変に人材を登用することで結果を出してきました。他社から再雇用した高齢の方々も元気に活躍していますし、原告の姉は執行役員にまで抜擢し、会社の支援もあり学位も取得しています。

 世間一般の風潮として、あまりにも「女性の登用」ばかりが誇張されてはいないでしょうか。何も女性の意見が全て正しいわけでもありませんし、当社のような例もあります。

 一般的に「経営者は強い、女性社員は弱い、だから女性の主張が正しい」との風潮を感じていますが、大きな問題です。同様の悩みを抱えている経営者からの相談を受けることもよくあります。

 当社の中国ビジネスを推進しているのは主に中国人の女性社員たちです。当然、民族が異なれば、文化も習慣も異なり、社内に軋轢は生じます。しかし国際化とは異文化との融合であり、それを恐れていては真の国際化はできません。社内で生き生きと働く彼女たちを見ると、当社は今大きなハードルを越えたと感じています。

 第三者相談窓口ですが、女性社員たちからは、せっかくの龍角散の家庭的な雰囲気を壊すことになると窓口の設置に難色を示す声もありましたが、現在は設置しています。当社は特に女性を優遇しているつもりはありませんが、裁判の前から男女問わず、育休、時短勤務も認めており、むしろ特段女性が働き易い社内環境であると自負しております。

 結果として裁判以降も女性社員の入社は絶えず、逆に女性社員の比率は裁判前より上がっているのです。

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