2022-06-23

【政界】動き出す自民党の首相経験者たち 見据えるのは参院選後の内閣改造

イラスト・山田紳



三者三様の援護射撃

 安倍が岸田政権に対し、発信を強めるという「動」の援護射撃を行っているとすれば、発信を控える「静」の姿勢に転じることで間接的に支えているのが前首相の菅義偉といえる。

 菅は5月23日夜と27日夜、元首相で自民党副総裁の麻生太郎と会食した。2人が1週間に2度も会食するのは極めて珍しい。都内の麻生邸で行われた27日は、親交のある菅の妻・真理子と麻生の妻・千賀子の夫人同士がセットした食事会だったこともあって、党内外で様々な憶測が広がった。

 菅は官房長官として、麻生は副総理兼財務相として長く安倍政権を支えてきたものの、昨年9月の自民党総裁選で対応が分かれた。麻生は現在、党副総裁として岸田政権を支えている一方、岸田と距離を置いた菅は「非主流派」と位置づけられている。

 菅が立ち上げる予定の勉強会に参加しようと、麻生が率いる麻生派(志公会)から所属議員4人が飛び出したことから、決定的な亀裂が入ったとされた。

 菅の勉強会は事実上の「菅派」とみられ、二階派(志帥会)や森山派(近未来政治研究会)などの非主流派を束ねる核になると主流派は警戒する。

 ただ、菅は発足時期を参院選後に延期した。新型コロナウイルスの感染状況やウクライナ情勢などに配慮した。党内抗争で混乱を招き、参院選に悪影響を及ぼすことは避けるべきだとの判断もあった。

 そうしたタイミングで、菅と麻生が接近したことから、岸田に近い議員は「これで結束して参院選に臨めるし、勝てるのではないか」との見方を示す。菅にしてみれば、非主流派を糾合できても有力な「ポスト岸田」議員がいないままでは、岸田が参院選に勝利したときに厳しく対峙することは難しい。

 非主流派であり続けるよりも、岸田との距離を縮めて参院選後に一定の影響力を示した方がいいとの思いがありそうだ。

 菅は麻生邸での会食から4日後の5月31日、今度は安倍と東京都内のフランス料理店で夕食を共にした。やはり夫人同伴だった。食事をとりながら安倍が菅の勉強会に水を向けると、菅は「これまで派閥の弊害を批判してきた」と語り、改めて「菅派」の旗揚げには慎重な姿勢を示したとされる。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事