2022-08-21

【『財界』創刊70周年】「道を拓く」経済リーダーと共に



日本の針路

 日本が近代化を迎えた明治維新(1868年)から154年が経つ。維新から敗戦まで77年。その間、日本は作家・司馬遼太郎氏が描く『坂の上の雲』を味わったが、その後、敗戦国というどん底に突き落とされた。さらに、その終戦から令和4年までで77年が経つ。

 日本経済は昭和が終わる1989年を境に低迷期に入る。1990年代の初め、株価や地価が暴落し始め、いわゆるバブル経済が崩壊。世界では『ベルリンの壁』が崩壊(1989年)、旧ソ連邦の崩壊(1991年)と激動が続き、経済のグローバル化が進んでいった。

 旧ソ連と並ぶ社会主義大国の中国も時の指導者・鄧小平氏が改革開放路線を導入(1978年)。経済大国への道を歩み始める。鄧氏は『南巡講話』で上海や重慶、広州などを一大産業拠点として成長を加速させる。そして中国は2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大
国にのし上がった。

 今は米中対立がささやかれ、国の生き方や価値観を巡る争いが登場。自由民主主義を共通の価値観とする米・欧・日と中国、ロシア(旧ソ連)などの陣営とに分かれる。自由主義陣営では経済安全保障という概念が強く打ち出されるようになった。

 ロシアによるウクライナ侵攻が起き、近年は中国がいつ台湾に進攻するのかに関心が集まる。こういう新たな危機時に経済人はどう立ち向かうか?

 経団連会長の十倉雅和氏は「社会性の視座を持って企業経営に当たるべき」と産業界に呼び掛ける。資本主義自体は効率的な資源配分やイノベーションを起こすのに優れた制度という認識を持ちつつも、今は「経済合理性の一辺倒ではやっていけない時代」という認識を示す。

〝新しい資本主義〟をどう築くか。十倉氏は経済学者・宇沢弘文氏の社会的共通資本という概念が大事と訴える。社会的共通資本は土地や森林、河川などの環境や道路などの社会インフラ、教育・医療、金融などの制度資本も含む。社会的共通資本の運営を語る上では、フィデューシャリー( fiduciary、信頼・誠実)の原則が基本になる。

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