2022-08-14

【私の帝国ホテル史】帝国ホテル・小林哲也元社長の「入社最初の仕事はトイレ掃除。お客様からの感謝の言葉に奮い立ちました」



上皇陛下からのお言葉

 しかも「セレンディピティ」はここで終わりではありませんでした。お二人の訪問から7~8年後、今度はファン・カルロス国王の皇太子であるフェリペ6世国王が国賓として帝国ホテルにお泊まりになったのです。ホテルマン冥利に尽きます。このときは今の定保英弥社長がお迎えしました。

 ホテルに勤めていると、このような歴史的な局面に遭遇することができるのです。もちろん、国内でも印象に残ったケースがあります。それが今の上皇陛下です。清子内親王(現、黒田清子さん)の結婚式にご臨席されるためにいらっしゃった時のことを鮮明に覚えています。皇族の方が結婚式を民間のホテルで行うことは稀なことでした。

 お二人は天皇皇后陛下というよりも1人の娘の父と母としての面持ちで、我々に対して「お世話になります」とお言葉をかけてくださいました。直接、天皇陛下からお言葉をいただけるとは夢にも思いませんでした。

 セレンディピティ─。この言葉は脳科学者の茂木健一郎さんの著したコラムを読んで知りました。もともとはスリランカ語を起源とする英語なのです。当時のセイロンに『セレンディップの三人の王子たち』という昔話があり、いろいろな冒険を通じて人々と出会い、ハッピーエンドを迎えるという物語。まさにわたしの帝国ホテルマン人生もその通りでした。

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