2022-09-01

みずほ証券・浜本吉郎の「銀・証」一体戦略、この時期、米国との合算で増収増益確保

浜本吉郎・みずほ証券社長



グループ内の「垣根」も低く


 みずほ証券の強みは、銀行、信託、証券の連携が他グループに比べて進んでいること。例えば投資銀行業務で、企業のM&A(企業の合併・買収)の際に銀行との連携で資金調達がしやすくなる他、企業が資金調達をする際、信託と連携することで不動産を活用したファイナンスも実行できる。

 また、個人の領域でも、みずほは顧客の「人生ポートフォリオ」を見ながら、銀行、信託、証券一体で資産形成、あるいは資産承継に向けたメニューを提供していく。

 みずほFGはカンパニー制によって個人の領域は一体で運営しているが、1人の担当者を通してワンストップで、グループの様々な機能を顧客に提供していくことを目指している。

 みずほFG内のグループ横断の連携も進む。昨年にはFGの「リテール・事業法人カンパニー」と「大企業・金融・公共法人カンパニー」の統合構想も浮上したほど。この時には実現はしなかったが、現在は「社内合弁」で人材を出し合って、企業の課題解決に、さらに注力できる体制を整えた。

 これまでも銀行と証券との連携は進めてきたが「壁」があった。それが「ファイアーウォール規制」。同一グループ間の銀行等と証券会社との間で、顧客の非公開情報の共有を制限する規制のこと。

 中堅・中小企業で緩和されるか否かについては、引き続き金融審議会での議論が続いているが、22年6月から上場企業での規制が緩和された。

 野村ホールディングスなど独立系大手証券会社は「銀行の優越的地位の濫用」の懸念から、規制緩和に反対してきたが、メガバンクグループは顧客の利便性向上や金融サービスの高度化につながるということで賛成。

 銀行系証券会社のトップとして、浜本氏は規制緩和をどう捉えているのか。

「銀行・信託・証券が一体となることが望ましい方向ではあるが、我々がいくら『一体化すべきだ』と言っても、サービスを享受するお客様に選んでいただけない限りは意味がない。また、3メガ共通だが優越的地位の濫用のようなことはあってはならない」

 銀行と証券が一体であろうがなかろうが、顧客に選ばれる品質のサービスを提供できているかどうかが重要だということ。

 ファイアーウォール規制は1993年に導入された日本独自の規制で、米国には今、そうした垣根はない。

 その意味で銀・証一体が今の世界標準といえるが、「ファイアーウォールが緩和されたことで、お客様に不利益があってはいけない。拙速に走るのではなく、お客様目線で『よかった』と言っていただける体制を整えていく」と浜本氏。

 今、注力しているのは組織もさることながら、証券の社員に銀行の知識、銀行の行員に証券の知識を付けさせるといった「人」の教育の部分。

 さらに、みずほFGは24年4月からグループ横断の人事制度をスタートさせる予定。現在はみずほFG、みずほ銀行、みずほ信託銀行が共通だが、みずほ証券などは別制度。これを共通化することで、グループ内を柔軟に異動できるようにする。

「文化や業態の違いもあって難しさもあるが、方向感としては一体化していかないと、みずほの強みを生かせない。人材の確保が難しくなっている中、グループの人材プールを一元的に運営していく必要がある」

 グループ内における「垣根」も低くして、より一体で顧客を獲得していく方針。

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