2022-09-15

オリックス・宮内義彦氏の直言「企業の存在意義は社会に富をつくり出すこと。それをチェックするのがガバナンスの根本」

宮内義彦・オリックスシニア・チェアマン



若者は「自分で何かやってやろう」という気概を


 ─ 本来、政治がこうした方針を打ち出さなければいけませんが、現状のしがらみの中で、票を失うといって躊躇する面が強くなっていると感じます。

 宮内 支持率を見て政策を決めるようではダメなのだと思います。「自分はこういうことがやりたいから政治家になった」という使命感、気概が見えない。

 今の民主主義は代議制ですよね。代議制のいいところは、1人ひとりの考えを聞いたら目先の話になるところを、代議制にしたら長期的なこと、大きなことを考えられるということです。それが大前提ですが、現実にはそうなっていません。

 ─ こうした状況下でも、企業経営者は自らが経営を担う会社を成長させなければいけません。例えば、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんのような人が、日本でもっと出てくるといいのでしょうが。

 宮内 ええ。日本には柳井さんのような人が少なすぎるのです。立派な経営者はいますし、立派な会社もありますが、数が少なすぎます。

 ─ 宮内さんはITなど若い経営者との交流もあると思いますが、彼らの可能性をどう感じていますか。

 宮内 昔よりも、優秀な人が思い切ってベンチャーを始めているのは事実です。しかし、やはりそれでもまだ数が少なすぎます。

 例えば、大学を卒業して中央官庁で働き、次はお金を稼ぎたいと欧米系の投資銀行に転職するといった人はいます。しかし、かつてのアップルのように自宅のガレージで新しいことをやろうという人が出ているかというと、そうはなっていません。まだ銀行や商社など大企業のサラリーマンになれたら嬉しいという人が多い。

 ─ 徐々に、若い優秀層には大企業は面白くないという人も増えているのでは。

 宮内 それに伴って、「自分で何かやってやろう」と思ってくれるといいなと思います。少しは変化してきていますが、その変化が少なすぎる。

 ─ そうした変化を起こすには何が必要だと考えますか。

 宮内 やはり教育だと思います。日本の教育は未だに覚えた人間が勝つ仕組みになっている。経営コンサルタントの大前研一さんは、文系の学部・学科で学ぶ知識の多くはスマートフォンやパソコンですぐに検索でき、その価値は高く見積もっても5円程度だと指摘しています。

 わかりきったことを覚える必要はありません。それ以上に考えることを教える必要があると思います。世の中は答えのないことがほとんどです。それに対応するにはどうしたらいいかを学ぶ必要がありますが、今の教育は答えのあることばかり教えています。

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