2022-09-15

オリックス・宮内義彦氏の直言「企業の存在意義は社会に富をつくり出すこと。それをチェックするのがガバナンスの根本」

宮内義彦・オリックスシニア・チェアマン



日本の潜在力発揮に必要なこととは


 ─ 行政を見ても、幼児教育を担う場として幼稚園と保育所があり、所管が文部科学省と厚生労働省とに分かれています。「こども園」で一つにしようという動きもありますが、未だに対立が続いています。

 宮内 この問題は規制改革会議で約20年前にも取り上げた話ですが、まだ同じような話をしているのかと思うと残念です。

 教育は文科省で保育は厚労省という形ですが、日本は昔、保育を必要とするケースは社会福祉事業だったわけです。ところが、今はそうではありません。保育は社会システム、国の義務としてきちんと整える必要があります。同年代の教育、保育を一体で考えるのは当たり前のことだと思います。

 さらに、今の「こども家庭庁」は内閣府の外局ですが、もうひとつ子供にかかわる国の組織が増えただけになっている。しかも当初「こども庁」としていたものを「こども家庭庁」としていて概念を広げてしまっています。

 ─ 日本には課題が多いわけですが、まだ潜在力そのものには期待できますか。

 宮内 潜在力はあるのではないかと思います。平和で、格差問題は欧米に比べて小さく、犯罪も少ない。いい部分はたくさんあるのです。しかし、いろいろなことで束縛が多すぎて、勢いを失ってしまっています。

 また、国民性なのかもしれませんがトラブルを避けたがる。例えばマスクです。厚労省は屋外におけるマスク着用について、人との距離(2メートル以上を目安)が確保できる場合や、確保できなくても、会話をほとんど行わない場合は、マスクを着用する必要はないとしています。

 人びとを見ていると散歩をしている人や、1人で車を運転している人もマスクをしています。まさに同調圧力に左右されているように思います。自分で考えて行動することが難しいのです。

 ─ この同調圧力の強い日本で、様々なことで議論をしてきた宮内さんを支えたものは何ですか。

 宮内 私はしょっちゅう同調圧力に負けていますよ(笑)。ただ、若い頃から広い世界を見せてもらいましたし、小さな会社にいて、自分で考える癖が付いていったのかもしれません。

 また、我々の世代は敗戦で世の中が引っくり返ったことを覚えています。権威者の言うことは「本当か? 」と疑い深い目で見るようになっている。そういう世の中の転換を経験したことが大きいのではないかと思っています。

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