続くハラの探り合い
ただ、中国はそうした中でも、国家安全保障局長の秋葉剛男を8月17日、中国・天津に招き、中国外交担当トップの共産党政治局員・楊潔篪との会談をセットした。
中国で楊は外相の王よりもランクが上位にある。厳密には外交トップの楊と秋葉はカウンターパートではない。メンツを重んじる中国が秋葉と楊の会談に応じたことは、何らかの意図があったとされる。
7時間にも及ぶ会談の内容は公表されていないが、岸田と習の直接会談を含め、再び日中対話の機運が盛り上がる可能性さえある。実際、それ以降も中国サイドは〝秋波〟を送ってきている。
岸田が8月下旬、新型コロナに感染すると、習はお見舞いの電報を送ってきた。「国交正常化50周年にあたり、新時代の要請に応える中日国関係の構築を共に進めていきたい」と記してあったという。
中国は外交的に揺さぶりをかけ、日本の出方を探っているともいえる。一方で軍事的な強硬姿勢を緩める気配は見られない。
中国軍は9月上旬、ロシア軍が日本海などで実施した「ボストーク」と呼ばれる大規模軍事演習に参加した。9月3日には、北海道の神威岬の西の約190キロ沖合をロシア海軍のフリゲート艦3隻と中国海軍のミサイル駆逐艦など3隻が東に向けて航行。この6隻は周辺海域で機関銃の射撃を行ったことが確認されている。