2022-10-04

【ファスナー世界最大手】YKK・大谷裕明社長「世界の各地のリーダーと常に対話できる体制を」

大谷裕明・YKK社長



地政学リスクとどう向き合う?


 ─ かつて、中国は「世界の工場」と言われた時期もありましたね。

 大谷 ええ。中国が世界の工場であった時も、ものすごく重要でした。

 今も確かに重要であることに違いはありませんが、欧米のバイヤーが分散化しようとしています。中国一辺倒から、チャイナプラスワンどころか、プラスツー、スリーを検討しているんです。

 確か2010年過ぎだったと記憶していますが、米国の衣料品輸入では全てのカテゴリーにおいて、中国が最大の輸出国でした。それが今は、ジーンズ、コットンパンツはバングラデシュ、ジャケットはベトナム等が中国に規模的に追従してきています。

 我々は、お客様が進出する動きに合わせて、我々もその国に進出するという考えでずっとやってきています。

 ─ 自らの置かれたポジションを冷静に見極めることが大事だと。

 大谷 ええ。我々が注視すべきは、縫製産業全体の動きと、そこに我々が進出することでお客様のご要望にマッチングするかどうかです。

 そうした検証を積み上げた結果がバングラデシュやインドへの進出であり、最近ではパキスタンです。また、98年にYKKベトナム社を設立しましたが、今のベトナムの隆盛、成長には目を見張るものがあります。

 常に我々は市場の要望をしっかりと見ながら、それに合わせて対応していくことが必要となります。世界のサプライチェーンのバランスを今後も見極めていきます。

 さらにはサステナビリティ志向がますます広がっていくと、必要なものを必要な時に提供することが重要な状況になりますから、そうなると例えば欧州の市場であればトルコや北アフリカ、米国であれば中米といった、消費地と近い場所で生産しようという動きになるかもしれません。

 ─ あくまでも市場の動き、顧客の動きに対応して動いていくということですね。

 大谷 はい。そうした動きを察知し、我々はお客様の動きに合わせていきます。中国だからどうかということではなく、お客様がどう動いていくかに合わせるのが、我々の使命であり、役割だと思っています。

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