2022-10-21

デジタルで横串を刺す専門組織を設立 人と人をつなぐ【東急】の「街づくりDX」戦略

リアルとデジタルの融合を進める東急グループ(写真は東急東横線)

 ただ、東急グループの主力事業は鉄道や不動産であり、自前でのソフト開発経験はなかった。そこでアーバン・ハックスが中心となって外部からWebデザイナーやモバイルアプリエンジニアなどをかき集めた。その成果が少しずつ出てきている。要はソフト開発の内製化だ。

 その一例が「東急線アプリ」のリニューアル。新しい東急線アプリでは鉄道の遅れなどの情報をタイムリーに通知し、アプリを起動していなくても情報を視覚的に確認できるようにした。加えて、迂回ルートの確認や遅延証明書の発行ができ、個人の予定への影響を最小限に抑えられるようにサポートする。

 東急カードアプリも「東急カードプラス」に変更した。起動時に生体認証を用いてユーザーの安全・安心を確保できる。利用明細は利用月ごとにグラフ表示するなど直感的に理解できるように工夫を施した。

 さらに「東急ホテルズ」アプリもリニューアル。22年7月に開業した「京都東急ホテル東山」では、スマホがホテルの部屋の鍵になる「デジタルルームキー」機能を先行して導入した。10月開業予定の「吉祥寺エクセルホテル東急」でも東急ホテルズアプリを活用したサービスを拡張する計画だ。

 鉄道会社でありながらデジタル技術を内製化させる─。通常であれば、デジタル領域は外注するものだが、東急はあくまでも内製化にこだわるという。宮澤氏は「ソフト開発は常に時勢の変化にタイムリーに対応しなければならない。外注していては時間がかかる。明日にでもサービスをローンチできるようにするためには手の内化する必要がある」と強調する。

 そして、「沿線の街で暮らす人、渋谷に通勤する人、東急のサービスを日々利用する人たちの声を取り入れて、不満を取り除き、要望を聞きながらプロダクトをアップデートしていく」と宮澤氏は将来性について語る。

 東急の見据える街づくりのDXは総合不動産やITといった専門人材を抱える企業との競争にもなる。激しい競争の中で、鉄道会社ならではのリアルな資産を強みに変えてデジタルな一手が打てるかどうか。鉄道を起点に生活産業グループとしての歩みを始めている。

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