2022-11-11

【習近平3期目をどう読む?】國分良成氏を直撃!「習近平にとって過去10年間は権力闘争。 ここから本当の『習近平時代』が始まることになる」

國分良成・前・防衛大学校長



個人崇拝は一方通行では成り立たない 

─ 習近平1強時代になったわけですが、「個人崇拝」を強めていくことになりますか。 

 國分 問題は、崇拝をするかどうかは一方通行では成り立たないということです。上から強制しても崇拝は生まれません。いくら「権力」を持っても「権威」が生まれるとは限らないということです。特に、40年も改革開放をやってきて、社会はもう多様化しているわけです。 

 ですから今後、個人崇拝につながるようなキャンペーンは進めるでしょうし、制度的にも習近平の正しさを訴え続けると思いますが、逆に言えばそれは「強さ」ではなく「弱さ」の表れという感じがします。 

 ─ 中国の大衆の中から反発が出るということは考えられませんか。 

 國分 反発があったとしても、中国はこれまで人類が経験したことがない「監視体制国家」を作り上げてきました。 

 あらゆる技術、装置を使って、中央監視機構を構築したわけです。人の心の中までは統制できませんが、何か行動を起こそうとした時には、すでに様々な情報が感知されるという体制です。 

 行動を起こすのは容易ではありませんし、起こしたところで組織がなければ散発的で終わることになりますから、普通の人達としては、政治からできるだけ距離を置くようになります。 

 そして、習近平思想に好意を感じているか、いないかは別として、それに反発することによる不利益を被らないように服従することが無難だということにならざるを得ないと思います。 

 ─ ただ、歴史を見ても、個人の独裁が長続きした例はありませんね。 

 國分 「権力は必ず腐敗する」とよく言われます。ただ今後、中国では国民に口を開かせない体制になるわけです。 

 では、どこに問題の「裂け目」ができるかと考えると、それはやはり「経済」です。どうやって成長の原動力を見出すかということが最大のポイントになるはずです。 

 ただ、今回の党大会の報告を見ても、最も重視しているのが「国家の安全」と「先端的科学技術」です。このうち、先端的科学技術は、大規模な生産につながらないことが多く、必ずしも雇用を生み出すわけではありません。その意味で、経済成長に貢献するかは疑問です。 

 また、問題は投資です。これまで、やり過ぎによって不動産などのバブル崩壊が至るところで起き、誰も住んでいないマンションが林立しています。これ以上投資をすることの危険性は中国も感じていると思います。 

 この投資の代替として「一帯一路」を構想したわけですが、投資先行で見返りが少ないという状況になっています。 

 ─ 国内雇用の確保も重要になってきますね。 

 國分 そうです。中国では今年7月から8月にかけて約1100万人の大学生が卒業しました。日本の20倍近い数ですが、彼らの就職がどうなったか。 

 昨年は、約600万人が大学院を受験しています。合格者数はわかりませんが、おそらく200万人いないのではないでしょうか。それ以外の人たちがどうなったかは、ほとんどわかっていません。中国が最近公表している数字によると、青年層の失業率は20%近い。 

 コロナ禍が、まだしばらく続きそうだという前提で考えると、経済的には相当苦しい状況を迎えることになるでしょう。そうなると、コロナが収束するまでの間は上からの統制を強めざるを得ない。むしろ徹底的に強めていくことになるのではないかと思います。 

 ただ、おそらくもう今後は、高度経済成長はありません。そんな中で国を閉じると、そこから戻るのが難しくなります。いわば「奥の細道」に入り込んでいるように見えます。

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