経済成長が見込めない中国
─ 当面は経済成長が見込めないという前提の中で、どこに可能性を見出していくか。
國分 1つは先程申し上げた科学技術だと思いますが、もう1つは東南アジアとの一体性を考えているのではないかと思います。中国大陸市場そのものは、人口減などもあって疲弊して、限界が来ています。
その時には「グレーターチャイナ」(大中華圏)で考えていくのが一つの方法ではないでしょうか。東南アジアに鉄道や道路を広げ、生産拠点を移転しています。今後の関係性の中で「グレーターチャイナ」的発想が出てくる可能性があります。
かつて日本はASEAN(東南アジア諸国連合)に非常に強いと言われてきましたが、今は中国の影響力が東南アジアに相当に浸透していて、日本の存在感が薄れているのです。
西側だけの発想で物事を考えていると、中国との関係において間違います。東南アジアを始め、多くの国では中国をそれほど好きではなくとも、自国経済のためにも中国経済を利用したいと現実的に考えています。
今回、習近平は「中国式現代化」と言っています。中身はまだ不明確です。触れているのは人口が多いということくらいです。中国モデルをつくりたいのだと思いますが、これまでやってきたことはといえば、「西洋のモデルを押し付けるな」ということくらいです。
東南アジアの国々には、中国との関係を維持しようという国も多いわけです。我々日本も過去、東南アジアに相当注力してきたわけですから、そのことは忘れてはいけないと思います。
─ インドとの関係はどう見ていますか。
國分 政治的、安全保障的に考えた場合、インドは中国に相当脅威を感じています。日本にとっても「Quad」(クアッド=日米豪印戦略対話)という枠組みの中でインドと関係性を築いてきたわけです。
ただ、元々は中立外交が得意な国ですから、インド独自の利害はあり得ます。そこは一面的に考えない方がいいでしょう。
20年に中国とインドは中印国境紛争を起こしています。この時には双方、発砲命令が出せず、掴み合いの乱闘になり、両国で数十人が亡くなりましたが、インド側の犠牲者の方が多かったそうです。
この時、中国はインド側に食い込むことに成功したようですが、これをインド側に戻したと言われています。クアッドの場において、対中国問題の際にインドに黙っていて欲しいという狙いがあったのでしょう。
─ 中印は緊張関係にあっても、お互いに妥協すべきところは妥協していると。
國分 ええ。22年9月のウズベキスタンでの上海協力機構の首脳会議で、ロシアのプーチン大統領は習近平と会談し「侵攻を巡る中国の疑問と懸念を理解している」と発言しています。そしてインドのモディ首相も、プーチンとの会談で「今は戦争をやっている時ではない」と発言しました。これは米国に対する配慮も反映されているのではないかと思います。