2022-11-29

【政界】「聞く力」だけでなく「日本をこうする!」という政策や情報発信が求められる岸田首相

illustration by 山田 紳

国会後半戦の行方

 そうした岸田流「聞く力」を演出しながらまとめられた総合経済対策。野党の意見も聞くことで、総合経済対策の裏付けとなる補正予算案の国会審議を優位に進めたいという思いがあった。もっとも、元首相の安倍晋三の「国葬」実施が与野党各党に十分な説明をしなかったことで反発を招いたという教訓もある。

 ただ、大胆な総合経済対策を打ち出すことにより下落傾向が続く内閣支持率の反転回復につなげるという最大の狙いは、外れてしまったようだ。

 共同通信社の緊急世論調査(10月29~30日実施)で内閣支持率は37・6%となり、前回調査と比べて2・6㌽増えた。だが、低迷を脱するまではいかず、不支持率(44・8%)の方が多いことに変わりはない。

 日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(28~30日実施)の内閣支持率は42%だった。9月調査(43%)より1㌽減り、5カ月連続の下落となった。

 政府・与党は補正予算案について、11月18日までに国会提出し、財務相の鈴木俊一による財政演説を21日の衆参両院本会議で行い、審議入りさせる。24、25両日は財政演説に対する与野党代表質問を実施し、その後、衆参予算委員会で2~3日ずつ審議を行うことで、12月上旬に成立させるというシナリオを描く。ただ、その通りに進むかは見通せない。

 今国会は首相官邸と与党との連携がうまく機能せず、異例の事態が相次いでいる。今国会は10月3日に召集されたが、財務相の鈴木が20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため11~15日にワシントンに出張したことから、岸田の所信表明演説と各党代表質問が終わっても予算委員会を開けず、ほぼ1週間の「開店休業」状態となった。

 また、岸田が突然、「国葬」実施について国会で説明すると表明し、与党内が混乱。国会の閉会中審査を急きょ、開催したことがあった。旧統一教会の問題を巡っては、教団との接点が次々と明るみに出た経済再生相の山際大志郎を更迭した経緯について、衆院本会議で岸田が説明すべきだとする野党側の要求を、首相官邸の慎重論を押し切って与党側はあっさり受け入れてもいた。

 さらに、三権分立の観点から閣僚は国会の役職に就かないのが慣例なのに、山際の後任に起用された前厚生労働相の後藤茂之が国会の裁判官訴追委員会委員に選任されるという椿事も起きた。

 政府・与党の不手際から国会前半戦は野党ペースで進んだ。野党は旧統一教会との関係をめぐる説明が迷走した山際を辞任に追い込んだとして勢いづく。補正予算案の審議を行う後半戦でも事務所費問題が浮上している総務相の寺田稔や、復興相の秋葉賢也を追及する構えだ。

 閣僚らの「辞任ドミノ」に持ち込むことができれば、岸田政権に大きなダメージを与えることができる。首相官邸と与党との足並みが大きく乱れる可能性がある。


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