2022-12-21

【激変する金融市場】大和証券グループ本社社長・中田誠司の 「資産管理型ビジネスモデルへの転換で」

中田誠司・大和証券グループ本社社長




資産運用で日米の差はなぜ開いているのか?


 このように新しい動きが出ているわけだが、直近の個人金融資産を見ると、2007兆円。この内、現金・預金は1102兆円で全体の54.9%を占める。

 株式等は199兆円(全体の9.9%)、投資信託86兆円(同4.3%)、債権証券25兆円(資金ニーズのある自治体や企業が発行する債券、同1.3%)と、株式・債券類は合わせて全体の15%強に過ぎない。

 ちなみに保険・年金・定型保険は538兆円(同26.8%)となっている。

 米国の個人金融資産は約113兆ドル(2021年6月時点)。これを今の為替相場の1ドル・140円で換算すると約1京5820兆で日本の7倍強になる。この20年間で米国の個人金融資産は約3倍に増加。これに対し、日本は1.4倍の伸びにとどまる。なぜ、こうも差が開くのか?

 米国の家計はリスク選考型、日本は慎重型だからと言ってしまえば、身も蓋もないが、資産運用では、リスクとリターンのバランスを取ることが大事だということ。

 日本では、2013年初めからのゼロ金利政策の下、預貯金の利息がゼロ%に近い状態が10年近く続く。預貯金の元本は守られるものの、リターンはほぼゼロ。このような状況下で若い世代を中心に、資産運用に関心を向ける層が出てきたということ。

 それにしても、資産運用での日米の差は大きい。米国は株式・債券での個人金融資産の運用が53%強、預貯金は11%強(日本は前述のように、株式・債券は15%弱、預貯金が55%強という構成比)である。

 このことをどう考えるか?

「米国もいきなり、今の個人金融資産になったわけではないんですね。また米国のほうがリスク選好がある国民性なのかといったら、決してそうではなくて、米国も1974年に個人を対象にした税制優遇制度の退職金口座ができたんです。1981年にいわゆる確定拠出型年金ができた。それから40年、50年かけて、今の状態をつくってきたという歴史です」

 中田氏は、日本においても、「『貯蓄から投資へ』は一朝一夕にできるものではありません」と強調し、「国民皆が使えるような制度づくり。それも長く使えるように、税制優遇制度をしっかりつくったうえで、20年、30年かけて取り組むべき仕事です」という思いを語る(インタビュー欄参照)。

 確かに、旧来の年金制度に加え、老後に備えて積み立てを行う『確定拠出型年金』制度がつくられたのは2001年(平成13年)のこと。

 また、個人が自分で老後資金をつくるための『個人型確定拠出年金』(愛称・イデコ=iDeCo)が設計されたのが2017年。さらに先述のNISAができたのは2014年、つみたてNISAは2018年とまだ歴史は新しい。

「これから何十年も長く使えるように、長期的な税制優遇制度を構築していただいて、それこそ長期戦略的に、『貯蓄から投資へ』をどうやっていくかということになります」と中田氏。

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