2022-12-16

【自治体病院同士の合併】日本海総合病院・島貫隆夫病院長「病院経営が黒字になって新しい医療機器も買える。スタッフのやる気が一気に高まりました」

 ─ 患者の利便性も増したということですか。

 島貫 はい。当初は2病院それぞれに患者様は自分のIDを持っていたのですが、その後、日本海総合病院に急性期の診療科を全部移したときに、2つの病院のIDを統一しました。大変なシステム統合でしたね。

 マイナンバーカードもなく、全ての情報が紐づいていたわけではありませんでしたから、苦労して手作業で紐づけていきました。そして患者様のIDを一本化。そこから「ちょうかいネット」へとつながりました。

 ─ やはり患者の情報を複数の医療機関で共有できれば医療の効率も上がりますか。

 島貫 もちろんです。患者様の医師記録を全部開示したことによって、こんな補完関係ができあがりました。診療所や別の病院から患者様が当院に紹介されてきて外来を受けたり、何回か通院して治療を受け、また診療所などへ戻るわけですね。

 そして診療所の先生たちが患者様に「どうでした?」と尋ねるわけです。そのとき診療所の先生は「ちょうかいネット」で当院の診療録が全部読める。どんな病気で、どんな治療をしたか。つまりは、当院のドクターの考え方が分かるのです。

 それを見た診療所の先生が患者様に分かりやすく説明してくれるのです。そして患者様も誤解があったら丁寧に修正してくれますし、自分に処置された治療内容も深く理解ができる。ですから、「ちょうかいネット」で医師記録を開示すると、訴訟が増えると言われましたが、実際は逆でした。情報共有がいかに大事かが、如実に現れた事例だと思います。

(次回に続く)


しまぬき・たかお
1955年山形県生まれ。80年山形大学医学部卒業。山形県立新庄病院や山形市内の病院勤務を経て、米南カリフォルニア大学医学部に留学。帰国後、山形刑務所勤務、山形大学医学部第2外科助教授。2008年山形県・酒田市病院機構日本海総合病院副院長などを経て、16年から現職。

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