2022-12-19

【公立病院改革の第一人者】監査法人長隆事務所・長隆代表「病院経営も〝人〟が全て。病院の理事長同士がまとまれば効率的な医療ができる」

 ─ 経営形態を変更して創意工夫で経営しているのですね。

 長 大規模な例では2016年に地方独立行政法人となった千葉県旭市にある旧市立病院の「総合病院国保旭中央病院(旭中央)」があります。病床数が約1000ある大規模な病院です。

 独立行政法人になる前も、開設以来一度も赤字になっていない稀有な病院ではありますが、その病床数の多さを大学からの医師の派遣によって支えていました。ただ、ある時、整形外科に来ていた医師を東大が引き上げてしまい、人手が足りなくなってしまったのです。

 その際、独立行政法人にすることを私がお手伝いし、職員の皆様もやる気にあふれた方々でしたので、今では全国でも有数の病院として大きく発展しています。

 ─ そのような状態の中で、どんな改革をしたのですか。

 長 旭中央の改革が成功したのは、1つには多くの人が独立行政法人化の方向で改革を進めていくことに賛成してくれたことがあると思います。努力する人が報われる経営体質にすることを、大多数の病院スタッフが賛成したということです。医師数も増え、この独法化は大きな成功例となったと思います。

旭中央病院の「改革の方向」


 ─ その旭中央の「改革の方向」とは、どのようなものになるのですか。

 長 実は約10年前にも、このエリアを中心に銚子市なども含めて病院を集約しようという提案をしたことがあるのですが、手を挙げてくれたのは旭中央と山武市の「さんむ医療センター」だけでした。

 さんむ医療センターは199床ほどの病院ですが、千葉県内でも業績の良い国保病院の1つ。現在は建物を建て替え中なのですが、この病院も独立行政法人化して医師も努力すれば報われる給与体系に切り替えた結果、経営が良くなりました。

 ─ つまり、現場の医師たちがやる気を持てるように病院を立て直すことも可能だと。

 長 その通りです。独法化はそういった仕組みを取り入れるために行うのです。

 自治体病院の経営形態は現在のまま、身分は公務員のままで良いということであっては改革が進まなければ共倒れになってしまいます。そうではなくて、現場で一生懸命働く医療従事者や医師、看護師たちが頑張れば頑張った分だけ報われるような仕組みを整えることは重要なのです。

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