2022-12-19

【公立病院改革の第一人者】監査法人長隆事務所・長隆代表「病院経営も〝人〟が全て。病院の理事長同士がまとまれば効率的な医療ができる」


 ─ こういった改革は都市部でも展開可能なのですか。

 長 もちろんです。有名な事例の1つが名古屋市です。同市内には城北、城西、東、守山、緑の中小規模の5市立病院がありました。まず、名古屋市立病院の統合・再編によって、それぞれ東と西に500床ずつの「名古屋市東部医療センター」と「西部医療センター」が作られ、それぞれの特色を生かす市民病院となったのです。

 再編が進み、経営も改善されたのですが、両病院に再編されなかった2つの小さな市立病院もあり、赤字経営が続いていました。そんな中で、医師の安定的な確保や医療の質の更なる向上、臨床研修・研究の充実などの観点から、21年4月にその赤字の病院を市立病院としては廃止し、名古屋市立大学医学部附属病院に組み込むことになったのです。

 ─ ここでも改革を引っ張ったリーダーがいるのですか。

 長 はい。名古屋市立大学理事長の郡健二郎氏です。郡氏が医学部長だったとき、いち早く病院連携の重要性に気づき、近隣の豊川や新城といった地域の医療関係者とも議論を重ね、名古屋市立大学から医師を派遣したりしてきました。

 赤字に悩んでいた名古屋市でも病院の再編・統合の動きが出てきました。私が名古屋市立5病院市立病院経営改善推進委員会の委員長として方針を決めさせていただきました。当時、名古屋市内も公立病院が多すぎたのです。それで市立病院を5つから2つにしたらどうですかとまず答申しました。

 そんな取り組みをしている最中に郡氏が名古屋市立大学の理事長に就任し、私の考え方にも賛同いただき、私を強力に支えていただきました。大学の附属病院化までに10年近くの歳月がかかりましたが、理事長はやり遂げました。

 ─ 他に援軍がいたと。

 長 ええ。名古屋市の場合は、名古屋市自身も一貫して私を支持してくれました。当時の副市長から「長さん、市は一生懸命やります。このまま何もしなければ市の財政は破綻してしまう。長さんの案を応援するから、ぜひ答申を出してくれ」と。それから苦節10年です。

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