「日々の仕事を地道にやること。これが大事」─野村不動産社長の松尾大作氏はこう話す。足元で経済環境が不透明感を増し、日本でも金利上昇の足音が聞こえ始め、不動産への悪影響が懸念されている。だが、「どんな状況下でも、お客様のニーズを敏感に捉えて、事業を展開していくということに尽きる」と松尾氏。財閥系と違い、土地を持たず、スピードで勝負してきた野村不動産。次の成長に向けて打つ手は─。
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コロナ禍を経て変わった住まい方、働き方
「コロナ禍で住まい方、働き方が変わった。特に住宅は、一部でリモートワークが定着し、住まいで過ごす時間を豊かにしたいというニーズが強まっている」と話すのは、野村不動産社長(野村不動産ホールディングス副社長グループCOO=最高執行責任者)の松尾大作氏。
特にマンションではコロナ前には、多少部屋が狭くても都心に近い場所のニーズが強かった。しかし、例えばリモートワークが増え、小さい子供がいる家庭などでは「トイレや浴室で仕事をしている人もいると聞いている」と松尾氏。
野村不動産の顧客は各世代満遍なくいるが、コロナ以降は特に30代で、正社員の共働き夫婦「パワーカップル」の需要を掘り起こすことができ、「顧客層が厚くなった」(松尾氏)。
オフィスについては、大企業を中心に「様子見が続いている」と松尾氏。リアルの対話を重視してオフィスに回帰する企業もあれば、リモートワークを進める企業もあり、対応は様々。
この状況下、空室率の上昇が話題になるが、松尾氏は「私は不動産において、マクロのデータではなく、あくまでも局所的な、ミクロの情報を大事にしている」と話す。1つの大きな企業がオフィスのフロアから抜けて平均の空室率が上昇していたというケースも多いからだ。
「どんな状況下でも、お客様のニーズを敏感に捉えて、事業を展開していくということに尽きる」(松尾氏)
だが、不動産を巡る環境は不透明感を増す。土地価格や建築費用の高騰、さらには欧米で金融引き締めが進む中、日本でも今後、金利の上昇局面が来ることが予想されている。松尾氏は今後をどう見通しているのか。
「我々は用地取得に関しては3、4年先まで数字が読めている。ただ、足元のマンション販売は好調で、各デベロッパーは用地確保に動いており、競争は激しい。用地情報、特に大きな事業法人が〝模様眺め〟で態度を決めかねていて、用地が出にくくなっている」
また、相続案件の一部が、建築費高騰で相対的に土地の価格が下がったことで、土地が出てきづらくなっているという悪影響が出る。