2022-12-20

野村不動産社長・松尾大作の「神は細部に宿る」精神 「新しい街づくりは小さなことの積み重ね」

松尾大作・野村不動産社長



2025年、本社を東京・芝浦に移転


 近年、野村不動産では、そのエリアのシンボルになるような大型再開発が目立つ。

 日本橋で三井不動産、野村ホールディングスとともに参画する「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」ではグループ発祥の地である「日本橋野村ビル旧館」の保存、活用において役割発揮が期待される。

 前述の中野サンプラザ跡地再開発は、7000名クラスのホール事業も手掛ける。地域文化の象徴となる開発だが、「ポイントはエリアマネジメント」(松尾氏)。すでに地域活性化に向けたイベントを手掛けている。

 エリアマネジメントは同社の特長の一つ。野村不動産がこれまで手掛けてきた千葉県船橋を皮切りに、神奈川県日吉、そして東京都亀戸でも「地域に開かれた街づくり」を進めてきた経験を生かしていく。

 そして「芝浦プロジェクト」は浜松町ビルディング(東芝ビルディング)の建て替えと、JR東日本が保有する「東海道貨物支線 大汐線用地」を活用し、オフィス・ホテル・商業施設・住宅を含む高層ツインタワーを開発する。

 区域面積は約4・7ヘクタール、延床面積は約55万平方メートル、高さは約235メートル。「S棟」は25年2月竣工予定、「N棟」は30年度竣工予定となっている。

 ホテルは、日本初進出のフランスのラグジュアリーホテル「フェアモント」が入る。また、敷地のうち3000平方メートルを緑地とし、その環境の中で出社しながら「ワーケーション」(ホテルやリゾート地で働く過ごし方)を実現する「トウキョウ ワーケーション」を提案。

 こうした新たな働き方を具現化する意味もあり、野村不動産は25年に、48年間本社を置いていた新宿から、芝浦プロジェクトのS棟への移転を決めた。

「新しい企業風土を創ろうということで移転を決めた。移転コストはかかるが、次の成長を取りに行くためには不可欠だと考えている」と松尾氏。

 現時点で、まだ東芝ビルは稼働中だが、テナントの移転でフロアが空いている。そこで、その場所に「トライアルオフィス」を設置して、様々な部署が新たなオフィスづくりに向けた課題出しをしている。そこで出た課題を自らの新本社や、顧客のオフィスづくりに生かしていく。

「大規模開発でも、大きな部分ではなく、目線を下げて、小さな部分にフォーカスしていくことが大事」と話す。芝浦でも開発規模などが話題になるが、それだけでなく人々の「働きやすい空間づくり」に気を配る。

 浜松町周辺では、東急不動産・鹿島による「東京ポートシティ竹芝」、JR東による「ウォーターズ竹芝」、そして世界貿易センタービルの建て替え「浜松町駅西口地区開発計画」がある。地域間連携をいかに進めるかが活性化のカギを握る。

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