2023-01-05

第一生命HD・渡辺光一郎会長「産業構造が大きく変わる今、リスキリング、リカレントなど産学で教育の見直しが必要」

渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長



DX、GXを担う人材を育成するために


 ─ その意味では、岸田政権が打ち出した「新しい資本主義」もそうですが、世界的に資本主義のあり方を見直す動きが出ていることも大きいですね。

 渡邉 そうですね。ミルトン・フリードマン(新自由主義を代表する学者)的な「株主資本主義」で様々に出てきた問題を解決する方向性は、経団連が言っている「サステイナブルな資本主義」と同じで、資本主義をバージョンアップしながら、新しい構造にしていくのだということです。

 その時に、「市場か、国家か」、「官か、民か」というような二択ではなく、市場も、国家も、官も、民も総合的にやる。これが新しい資本主義のバージョンアップなんだと。これが日本的なバランス論だと思うんです。今の教育も、「Society 5.0 for SDGs」も全てバランスです。

 これは、「東西文明の統合化」という梅原猛さん(故人、元京都市立芸術大学学長)の考えとも一致するのではないかと思います。この異なる文化の統合は日本の得意分野ではないかと思いますし、その考え方が出ているのが「新しい資本主義」だと思います。

 そのためにはイノベーション、スタートアップ、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)のような新しい構造に変えていって、そこに投資をしなければなりません。また、それらを担う人材をつくらなければいけない。だから「人への投資」だという構図なんです。

 ─ 日本が目指すべき将来像という全体感があってこそのリスキリング、リカレントなんだと。

 渡邉 そうです。「人」を変えなくてはいけないということに至って、ここでリカレントが出てくるのです。

 21年に、岸田政権が設置した「教育未来創造会議」の議論も、こうした考え方に基づいて進んでいますが、今日的に重要な整理をしてくれたと考えています。

 先程申し上げたように、新しい産業構造、社会構造を創るためには「人」を変えなくてはいけない、「人」を育成しなければいけない。それがリスキリング、リカレントという概念だということが、明確に出てきたのです。

 こうした意識の上に立ってリスキリング、リカレントが行われれば、新しい産業構造に向けて円滑な労働移動ができます。かつてのような「リストラ」ではなく、構造変化をしながら、そこに新しい人、スキルアップした人を移動させていくという考え方です。

 ─ 日本の構造改革と直結したリスキリング、リカレントだということですね。

 渡邉 そうです。リカレントは、先程申し上げたように、主に大学を中心とした発想として出てきました。ところが、2020年の「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)で、『リスキリング革命』が発表されました。これは産業の構造変化、DXを推進するものとして打ち出され、世界的に注目されたのです。

 リカレントが広い概念で、リスキリングは、その中の部分的な概念として出ているという整理の方がわかりやすいと思います。日本政府が打ち出しているリカレント教育は、リスキリングを包含した概念だと理解すればいいと思います。

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