2023-01-05

第一生命HD・渡辺光一郎会長「産業構造が大きく変わる今、リスキリング、リカレントなど産学で教育の見直しが必要」

渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長



大学院、博士課程の強化ともつながる


 ─ リスキリング、リカレントの効果を測ることも必要になるでしょうね。

 渡邉 おっしゃるように、学び直しの成果の適切な評価の他、そもそも、リカレント教育をきちんと実行できるような環境整備や、学び直しの意欲がある人への支援が必要だと思います。

 これは研修受講料の補助といった経済的な支援も含めてだと思いますが、特にこれまでは女性の学び直しの取り組みが弱かった。

 例えば、15歳段階での男女の理系リテラシーを比較すると、ほとんど変わらないのに、高校、大学と進むにつれて変わってくる。それを強化しなければいけないという視点での女性の学び直し支援も出てきており、これは重要な取り組みだと思います。これは「リケジョ」(理系女子)の育成のような形ですが、大きな視点だと思います。

 ─ 以前から「生涯学習」という概念もありましたが、これとの違いをどう見ていますか。

 渡邉 リカレントの位置づけは、方向性としては従来の生涯学習レベルの話に留まるものではなく、産学で取り組むものにしていくべきだと考えています。

 この考え方は、大学院改革を審議している中央教育審議会大学分科会の中でも出てきています。博士課程への進学者は日本では増えていません。一時、これを増やそうとして「大学院重点化政策」などの取組がなされましたが、その結果「ポスドク」(博士号を取得した後、大学や研究機関において任期付きで研究活動をする非正規雇用スタッフ)問題という形で行き先がないという話になってしまいました。

 一方で、欧米は企業と連動しますので、博士課程を出た人達が、企業人材としてどんどん入っています。日本企業の博士人材の少なさが、日本の弱さにつながっています。

 これを強化するためには、大学院の強化、キャリアアップ、高度人材育成のための大学院という位置づけといった形で、どうしてもリカレントに結びつくんです。

 この問題については、経団連の「夏季フォーラム」で、私が担当した分科会でもまとめたのですが、雇用制度と学びの世界、教育の世界が分離していたものを、どう循環構造にしていくか。つまり、「仕事と学びの好循環」をいかに実現させるかという問題意識です。

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