欧米では物価上昇に合わせた値上げが浸透
─ 新たな価格体系に移行しないことには、日本全体の課題になっている賃上げの原資を確保できなくなりますね。
磯野 おっしゃる通りです。日本はここ20、30年物価が上がっていないこともあり、なかなか転嫁が進みません。
原燃料価格が高騰し、円安で輸入コストが上がったのですから、全てのモノの価格を上げる必要があります。そのことによって、社員の賃金を上げるというサイクルが回るようになると思います。
─ 海外での値上げの状況はどうですか。
磯野 例えば、この1年半くらいの間、印刷用紙は欧米市場で複数回の値上げを実施していますが、ほぼそのまま通り、浸透しています。足元では欧州経済が弱含んでいますから、値上げが難しい国も一部にあります。
ただ、いずれにせよ、欧米では企業物価、消費者物価が上昇するのに伴って価格の改定ができているということです。日本は11月の企業物価が8%台、消費者物価が3%台という状況で、その間の5%は企業が負担をしている状況です。
─ 日本は「失われた30年」と言われますが、デフレの原因を自分達でつくっていると言えますね。
磯野 当社にとってというより、こうした状況が続くと若い人達が日本より海外で働いた方がいいという状況になり、日本の競争力が低下していくことを危惧しています。