2023-02-10

【木を原料に】王子ホールディングス・磯野裕之社長「森林資源で新たな領域を開拓していく」

磯野裕之・王子ホールディングス社長




海外事業をどう進めるか?

 ─ 事業の成長に向けて、海外事業の位置づけが、さらに重要になると思いますが、海外比率はどうなっていますか。

 磯野 22年3月期時点で売上高に占める比率は35%です。これを50%くらいには高めたいと考えています。

 東南アジアを中心とした用紙の製造・販売の他、パルプ事業も展開しています。パルプ工場はブラジルに1カ所、ニュージーランドに3カ所の工場があります。

 ブラジル工場はミナスジェライス州にありますが、この事業は元々、「日伯紙パルプ資源開発」として、日本の紙パルプメーカー11社と伊藤忠商事の出資で1973年に始まったものです。

 ─ ミナスジェライス州には日本製鉄のグループ企業で、やはり日伯合弁でスタートした高炉メーカー・ウジミナスがあるなど日本と縁が深いですね。

 磯野 そうです。ブラジルではパルプを生産して北米、欧州、アジア、中国に輸出している他、感熱紙を生産する工場もあり、こちらは中南米と一部北米地域に販売しています。

 感熱紙は、世界でもメーカー数が限られており、一定の需要があります。レシート類はもちろんのこと、医療向けで超音波診断による画像を印刷するのも感熱紙です。

 ─ 紙には様々な需要があるわけですね。一方で、デジタル化の進展で紙の需要が失われた面もあると思います。どう対応していますか。

 磯野 例えば、新聞用紙、印刷用紙は減少傾向が続いており、どちらも足元では対前年比90%台前半で推移しています。今後、大きな伸びは期待できません。

 需要が落ちるに従って、供給も削らざるを得ません。ですから、紙を生産する抄紙機を、適切なタイミングで停止していく。この10年間、止め続けているというのが現実です。もちろん、需要がゼロになるということはありませんから、一定のところで下げ止まってくれることを期待しています。

 一方、先程申し上げた段ボールなどのパッケージング関連は依然、年1~2%伸びていますし、家庭用紙のティッシュ、トイレットペーパーも年2%程度伸びているんです。

 ─ 段ボールなどの需要増は、やはりeコマースの進展によるものですか。

 磯野 eコマースでの購買が増加していますから、それを運ぶ際のパッケージングということで、段ボールなどの需要が増えていることもあると思います。伸びている分野には引き続き注力していきます。

 ─ 成長はやはり海外に求めていくことになりますか。

 磯野 そうですね。印刷用紙系などは、残念ながら海外も国内と同様に需要は増えていませんが、段ボールなどパッケージング関係は、引き続き経済が成長するに従って、今後も需要が増えるものと見ています。東南アジアやインド、そしてオーストラリアなどには注目しています。

 もう一つ、大きな流れの中で獲得したい市場は「脱プラスチック」です。例えば、お菓子の袋などは元々プラスチック系でしたが、徐々に紙に置き換わる動きが始まっています。

 プラスチック包装には酸化と湿気からお菓子等の中身を守る機能がありますが、それと同じ機能を紙に持たせることができれば、十分に代替が可能になります。

 ─ 技術的には対応ができると。

 磯野 現状は紙ベースに、内側にフィルムを貼ることで機能を持たせているものもありますが、紙にバリアコート層を付与したプラスチックに代わる新しい時代の紙製パッケージ製品もあります。どうしてもプラスチック包装と比べると、紙はコストが高くなりますが、脱プラスチックの一つの手段です。

 ─ 二酸化炭素の削減にもつながりますね。

 磯野 石油系のパッケージングを生産して、最終的に燃やすと仮定した場合と、紙ベースのパッケージングとで二酸化炭素の排出量がどれだけ違うかを計算したところ、60%ほど削減できるものもあるという結果が出ました。

 ─ パッケージ化を担う加工会社との連携も強める必要がありますね。

 磯野 その通りです。パッケージの袋そのものは、製紙メーカーだけではできず、それを形にする加工会社の方達がいなければ最終的な製品にはできないんです。

 食品の包装以外にも、半透明の紙を使って中身が見えるようにしたパッケージも開発しています。また、一部マスクのパッケージなどでも、中身が一部見えるパッケージが市場に出ています。今後もさらに透明度が高い紙素材やバイオマスプラスチックフィルムのなどの開発を進め、消費者ニーズにこたえていきます。

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