2023-03-02

岸田首相はなぜ、植田和男氏を日銀新総裁に選んだのか?

日本銀行本店




下手すれば景気後退、日銀はどう対応するか「金利がつく時代」を歓迎する企業、身構える企業

「金利がつく時代」が近づく中、企業の反応も様々。メーカーなどは借入金の利息負担などが増えてマイナス影響だが、銀行は停滞していた融資の復活が期待される他、メガバンクなどは海外強化、経費削減で筋肉質になったことで、さらなる成長が予想される。ただ、地銀などは今第3四半期までで6割が減益。内外債券の含み損の影響もメガ以上に大きく、苦しい状況。

 4月発足の新体制の最大の課題は、弊害が深刻化している「異次元緩和」を、市場や経済の混乱を抑えながら修正し、「出口」戦略に道筋を付けられるかどうかだ。

 植田氏はかねてマスコミへの寄稿などで「予想を超えて長期化した異例の金融緩和枠組みについて、どこかで真剣な検討が必要だろう」と指摘しており、異次元緩和の功罪の検証にも踏み込むと見られる。

 ただ、この10年間、企業も家計も国も「金利のない世界」に浸ってきただけに、「金利がつく時代」への転換はあらゆる経済主体に大きなインパクトを及ぼす。金融政策の手綱捌きを誤れば、財政への影響や経済危機をも引き起こしかねないだけに緊張の日々を強いられそうだ。

 植田氏は90年代後半から2000年代前半の金融政策立案に深くかかわり、日銀と親密な関係を持つ一方、ゼロ金利解除に反対した経験を持ち〝硬骨漢〟とも評される。

 その意味で、アベノミクスに強いこだわりを持つ安倍派を中心とする国会議員や関係者、異次元緩和から、いわゆる「伝統的な」金融政策への回帰を求める日銀OB、どちらも口出しがしづらい人選となった。

 当初の下馬評では、前述の雨宮氏の他、元副総裁で大和総研理事長を務める中曽宏氏、同じく元副総裁でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)経営委員長を務める山口廣秀氏らの名が挙がっていた。

 政府内では当初、国債の大量購入や、短期のマイナス金利と長期金利の超低水準への誘導を組み合わせた「YCC」(長短金利操作)など複雑化した状況を解きほぐすには、これまでの政策を企画・立案してきた雨宮氏が適任なのではという見方もあったが、異次元緩和の検証と政策修正が求められる次期体制のトップには選ばれなかった。

 また雨宮氏は、現総裁の黒田氏「直系」という見られ方をしており、その起用に対しては、歴代生え抜き総裁を含む日銀有力OBが猛烈に抵抗していたことも、人事に影響した可能性はある。

 一方で、例えば中曽氏や山口氏を据えれば、安倍派から「アベノミクスを否定するのか」と猛反発の声が上がっていたことは必至で、政権運営が不安定化する懸念すらあった。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事