2023-03-14

「市況に左右されない事業を」三菱UFJモルガン・スタンレー証券・小林真の「ウェルスマネジメント」戦略

小林真・三菱UFJモルガン・スタンレー証券社長




2社の提携関係は新たな段階に

 世界的投資銀行であるモルガン・スタンレーにMUFGが出資したのは08年に発生した「リーマンショック」がきっかけ。当時約9000億円を投じた。それを受けて10年に日本で合弁会社を設立。

「発足当時は投資銀行部門が大きな魅力で、今も当社の事業の中核をなしている。M&Aでトップを獲得するなど、様々なリーグテーブルで常に上位を占める地位を確立できた」

 小林氏は、この強みに加えて、今後は前述の「ウェルスマネジメント」でモルガン・スタンレーの強みを生かしていきたいという考えを持つ。

 今、小林氏を始めとするMUFGの関係者は、モルガン・スタンレーとの関係を「ジョイントベンチャー2.0」と表現する。日本にあるもう一つの合弁会社・モルガン・スタンレーMUFG証券(モルガン・スタンレーが51%、MUFGが49%を出資)とも連携を深め、日本市場を深耕していく考え。

 実は小林氏は、MUFGがモルガン・スタンレーへの出資を決めた後、その提携内容についての交渉責任者を務めた経験を持つ。「日本での合弁会社設立、グローバルでのコラボレーションなど、できることは数多くあると考えた。MUFGのバランスシートとモルガン・スタンレーのビジネスでサステナブルな証券会社ができると思っていた」と振り返る。

 難しい交渉で、侃々諤々で膝詰めの議論が続き、妥結には時間がかかったが「その交渉の日々が『スピリット・オブ・パートナーシップ』につながり、それは世代が変わっても生きている。これは我々の強み。私自身にとっても大きな経験」

 小林氏は銀行でキャリアをスタートしたが、証券、信託、リースとグループ内で多様な仕事を経験してきた「グループ一体」を体現した人物。「どの事業でも多くの方と知己を得ている。『証券の人間だから銀行のことはわからない、信託の仕事は関係ない』ではなく、お客様のニーズを聞いて、全てのことをアレンジできるようになることが理想。社員には将来、そうした人材を目指して欲しい」

 小林氏は1962年2月神奈川県生まれ。85年早稲田大学商学部卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。学生時代から海外で仕事をしたいと考えてきたが、就職活動時に父親から「今後、銀行も海外で活躍できるんじゃないか?」と勧められて三菱銀行を志望した。

 入行後は米ニューヨーク大学経営大学院への留学や、海外での「プロジェクトファイナンス」の強化に携わってきた。「全ての希望が叶うわけではないが、若い人達には自分のやりたいことは、ぜひ上司や周囲の人達に伝えるようにして欲しい。そして、その実現に向かって努力することが大事」

 今後に向けては「モルガン・スタンレーとMUFGの提携は『2.0』と次の次元に入ったが、ポテンシャルはまだまだある。投資銀行での協働から始まり、今はウェルスマネジメントにまで広がっているが、まだ発展する余地がある。そのポテンシャルを発揮できれば、国内外でもう一段、ステータスを高めることができる」

 今後も経済環境は不確実性が高い状況が続く。その中でいかに顧客の要望に応え、成果を出し続けられるか。モルガン・スタンレーとの関係強化がさらに問われる局面と言える。

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