─ 精度も高いのですか。
小宮山 例えば、国際科学技術財団の2023年の日本国際賞に、半導体レーザー励起光増幅器を開発して光ファイバー網の長距離大容量化に貢献した東北大学の中沢正隆・卓越教授と情報通信研究機構の萩本和男・主席研究員の表彰が決まったのですが、光ファイバーの中を光が通過中にどれくらい減衰するのか、増幅器がどれくらい増幅できるかを尋ねたら、見事に正解を答えていました。
ところが、もう少し一般的な少子化問題にどう対応するべきかと尋ねると、正しい答えが出てくるのですが、表面的なことに過ぎないものでした。誰もが考えつくような答えです。例えていうと、学生のようやく合格のレポートのようなものでした。
─ なぜそのような差が出てきてしまうのですか。
小宮山 中沢さんのような取り組みは具体的に書かれた文献がネット上にいくつも存在するからでしょう。チャットGPTはそれを見ているのです。ところが少子化問題といった誰もが様々な発言をしているテーマでは、そんなにシャープなものがありません。
そうすると、チャットGPTは出現頻度の高いものを探り当てようとするので、皆が言う一般的な意見や、あるいは逆に、そんなこと言っても意味がないのではないかといった内容が出てくるのです。しかし既に少なからずAIの影響は出てきています。
─ それは企業の雇用の面で、AIが人に成り代わったといったものですか。
小宮山 ええ。AIが出てきて若い弁護士の採用数がものすごく減りました。これまで弁護士事務所では若い弁護士に判例を調べさせていたのですが、それがAIにとって代わりつつあるのです。判例のデータベースは限られていますから、すぐにAIで見つけ出せるのです。
─ 業務を補助するスタッフもいらなくなりますね。
小宮山 そうですね。経営者と話をしていても、米国では既に人員削減の話が出てきていると言います。また考えてみると、早速生成AIの影響を受けるのが大学の先生ではないかと。学生のレポートがチャットGPTで書かれてしまうと困ってしまう。課題になりませんからね。
したがって、生成AIがもたらす問題の大きなものとしては、1つは教育。そしてもう1つがジョブ、仕事が減るということです。ただ後者については、日本は労働力不足ですから、うまく人財を移転させることができれば、もしかしたら逆にうまくいく可能性もあると思います。