2023-05-16

【三菱総合研究所・小宮山宏理事長に直撃!】「チャットGPT」と人の関係はどうあるべきですか?

小宮山宏・三菱総合研究所理事長



 ─ そういった活用方法も考えられますね。

 小宮山 そう思います。ですから教育が大切になります。例えば、小学校の子どもに生成AIを使わせてしまえば、頭の訓練ができなくなってしまいます。

 ─ 自分で考えることが教育の一番の役割ですからね。

 小宮山 ええ。考えさせるという点で言えば、米国でこんなことがありました。まずレポートの課題をチャットGPTに答えさせる。そしてそれを大学生に与えて間違いを見つけなさい、あるいは不十分なところを指摘しなさいという問題を出した人がいます。これは学生に考えさせるテーマです。さらに言うと、チャットGPTの出力をもとに各自のレポートを作成させるというのが良いかもしれません。

 先ほど申し上げたように、チャットGPTはインターネット上にある情報のうち、出現頻度の高い情報を抜き出してきます。だけどそうすると、皆が間違ったことを言っていることも多いわけです。要は多数決で決まった情報になります。

 ─ 時の世論が多数決で決まったからと言って、それが正論とは限りませんね。教育の現場で生成AIを取り入れる際に気を付けるべきこととは。

 小宮山 あくまで人間の頭を育てるということを基本にしなければなりません。そのためにチャットGPTを使うということはあり得ます。あくまでも補助的な使い方ですね。今までのグーグルや参考書と同じように、補助的に使いながらも、あくまで人の頭を育てることを軸に置いておくと。それが学習の基本です。その基本をしっかり確認しなければなりません。

 ─ 今は答えのない時代と言われます。そういう時代にあって、生成AIにはどんな役割を期待できると考えますか。

 小宮山 今までの人たちが何を考えてきたかが分かるということではないでしょうか。私は以前から、もし人間が蓄積した知識の中から正しい知識を選び出し、目的に応じてそれらを統合すれば、今の難題を克服できると訴えてきました。そうすれば、少子化も含めて今の課題は全て解決できるのではないかと思うのです。

 科学技術の知識、社会科学の知識、人文科学の知識、哲学の知識といったものの最も正しいと思われるものを統合することができれば、今の社会課題、あるいは人類の難題と言われている問題は解決できると、本気で思っているのです。今のチャットGPTがそうなっているとは思いませんが、生成AIはその入口のような技術として世の中に出てきたのかもしれません。

 しかし今のチャットGPTは確率で選び出しているだけに過ぎません。そう考えると、まだ何段階か、革命的な進歩と言えるようなものが出てこないと、人間の創造性が心配になるようなことは起こらないのではないかと思っています。

 ─ まだまだ試行錯誤が必要だということですか。

 小宮山 まだまだ必要ではないでしょうか。ただ、今申し上げたような意味での集合知や総合知といったものは、できれば出てきて欲しくありませんね。やはりここは人間がやりたい。人間しかできないと思いたいですね。ただ、「たかが」という言い方もできないことは確かです。

 ─ 「たかがAI」といった言い方ですか。

 小宮山 そうです。画像解析などをするディープラーニングという技術はとてもすごい。それが意味あるようになるほど、コンピュータの処理速度が速くなったわけです。それからインターネット上に載っている膨大なデータベースを必要なデータにすることができるようになったのも、コンピュータの処理のスピードが速くなったからです。

 しかしそこではまだ確率でやっている。それは本質的な創造性においては矛盾になります。ですから、それを解決する方法があるかどうかですね。先ほどのフォーラムでの議論でも、創造性とは何なのかがテーマとなり、とても考えさせられました。


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