2023-05-30

【武蔵小杉で産前産後ケア施設が開業】東邦大学看護学部・福島富士子元教授が語る”子育て支援政策”

福島富士子・ハピランド代表(東邦大学看護学部元教授)



先を走る台湾や韓国

 ─ こういった産前産後ケアへの取り組みで理解は広がったと言えますか?

 福島 子育てをしたことがない世代の方々にはあまり理解ができないという部分があるようなのですが、今の30代や40代の若手の世代になると違います。ですから、こういった若い世代の方々による子育て支援を手掛ける起業家が増えているのです。

 そういった使命感のある若い方々に、どんどん参入してきてもらいたいですね。今の若い世代は自ら子育てをして、実体験としての課題認識を感じているわけです。子育てにはどんなサービスが必要なのか。それを身をもって体験しているのです。

 昨今、企業の男性社員の育休取得を奨励する動きが出てきていますが、仮に1カ月の休暇がとれて子どもにミルクをあげることくらいはできても、奥さんにご飯を作ってもらったり、家事のやり方を知らない男性も多い。それでは意味がありません。

 育児休暇制度が先にできたことは素晴らしいことではあるのですが、育児だけでなく家事もできるようにならなければなりません。ですから、父親の意識改革も求められるのです。そこでヴィタリテハウスがあるウェルネスリビング棟の1階にキッチンパークを作りました。

 ─ どんな狙いですか。

 福島 父親が学ぶ料理教室を開くなどして男性の家事に対する腕を磨いていただくものです。大きなキッチンを作り、そこで両親学級をやったりして、お父さんのための食事教室を開くのです。実はこういった施設は韓国や台湾にはたくさんあります。

 ─ 海外の事例とは。

 福島 例えば台湾は産後ケアの先進国です。もともと病院が産後ケア施設を設置したのが始まりなのですが、それが約25年前のこと。台湾ではお産したら1カ月ほど産後ケア施設に滞在するのが当たり前になっています。その結果、今では2人に1人の妊婦が使用しています。

 ─ 国が積極的にかかわってきていると?

 福島 それが違うのです。民間がやっています。台湾では分娩費用が安い。お産後3日で退院すると分娩費用が安くなるように制度設計されています。その結果、産後ケアにお金を使う文化にもなってきたのです。そういった文化は韓国や中国でも共通していて、日本だけが東アジアの中で遅れています。


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