2023-06-02

アイリスオーヤマ・大山健太郎の国内回帰論「国内にはまだ耕す場所がいっぱいある!」

大山健太郎・アイリスオーヤマ会長


東日本大震災で気づかされた事


 アイリスオーヤマの本拠は仙台市。東日本大震災が起きた2年後の2013年に精米子会社・舞台アグリイノベーションを設立して農業分野に進出。大被害を受けた東北地方の振興にも貢献できる事業をということで、米の販売を開始した。

 そして、宮城県角田市の角田工場で精米する態勢を整えた。

 ブランド『生鮮米』は摂氏15度以下の低温環境で精米、使いやすいようにと、2合、3合の小分けパックにして、脱酸素剤を入れ鮮度を保ち、新米のおいしさを消費者にアピール。

 小分けパックにしたのも、既存精米は5キロから10キロ袋で販売されており、そうした既存精米との違いを出そうという差別化戦略であった。

 しかし、コトはそう簡単には運ばない。アイリスは、西の拠点として、佐賀県鳥栖市にも工場を構えるなど、全国に商品を配送するネットワークを構築しているが、消費者の購買習慣を変えるのは簡単ではなかった。

 試行錯誤が続く中、2015年に『パックご飯』の販売に乗り出した。これが大ヒットとなる。

 米の消費は毎年減少し続けている。マクロ的にはそうだが、『パックご飯』の市場は成長。餅や米飯関連の大手、サトウ食品なども好業績をあげるなど、ひと工夫した米飯市場は成長している。その市場規模はコロナ禍で毎年、前年比数%の成長を遂げ、2023年は4%台の伸び率で、約980億円になるという見通しだ。

 それにしても、なぜ、今、国内回帰なのか?

「われわれとすれば、3年前まではグローバル、グローバルで、海外の工場を毎年2つ位つくってきたのですが、今はちょっと供給過剰になりつつあるので、ブレーキを踏んでいると。あとは国内の工場の充実。米と水に力を入れて、近い将来は輸出を考えています」

 現在、アイリスグループの工場は国内18工場、海外18工場(米国、中国を含む)。同社の取り組みが注目されるのは、米の取引が農家との直取引であるということ。

「こうした農家との直取引は、全体の3割ですが、それを将来は5、6割に持っていきたい」

本誌主幹 村田博文

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