2023-06-01

白井さゆり・慶應義塾大学総合政策学部教授「物価目標2%を5年で総仕上げする。これが植田総裁の発言のポイント」

白井さゆり・慶應義塾大学総合政策学部教授




ゾンビ企業という言葉遣いは…

 ─ 政府が需要をつくる必要があるということですね。

 白井 先日、ある国際会議に出席したのですが、日本政府の方が「政府は今、一生懸命需要をつくろうとしている」と説明していました。

 例えば10年間で150兆円のGX(グリーン・トランスフォーメーション)投資の実現を掲げていますが、そのうち20兆円を「GX経済移行債」として国が調達して支出し、民間投資の呼び水にしようとしています。このように国が音頭を取っていくことは重要です。

 また、その政府の方は「賃金を上げていかないと、この国の未来はない」とも話をされていました。賃上げ、投資を含め、国が促していく必要があると。その際に、日本の弱い経済環境を考えると低金利が必要だけれども、永遠にそれが続かないかもしれないので、現状維持の間に手を打ちたいという言い方をされていました。

 ─ この低金利は、日本企業の新陳代謝を阻害しているということもよく言われます。

 白井 ええ。よく「ゾンビ企業」(実質的に経営がほぼ破たんしているにもかかわらず、金融機関や政府などの支援により市場から退出せずにとどまっている企業)という表現を聞きますが、中小企業の方々は生き残りに必死で、自分達がゾンビ企業などと思っていません。上から目線の言い方だと感じます。

 中小企業から見れば、低金利はありがたいわけです。ゾンビ企業をなくせば新陳代謝が進むという議論がありますが、東京でも空き店舗が埋まらない事例も多く、新陳代謝が進まないと多くの地方で企業も人も残らなくなりますから、廃れていってしまいます。

 地方のことを考えても、政治的には今後、金利がどんどん上がってしまうような状況は非常に難しいだろうと感じます。

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