2023-05-30

長隆・日本子育て包括支援推進機構代表理事 「産後ケア施設は収益性が高い。民間企業はどんどん進出すべきです」

長隆・監査法人長隆事務所代表(日本子育て包括支援推進機構代表理事)



武蔵小杉を成功する実例に

 ─ その共同企業体にクレイドルが入っていったと。

 長 はい。これもご縁がありまして、クレイドルの代表理事を務める田淵英人さんが5年前の福島先生のセミナーに参加されたのです。福島先生のセミナーを聞いた田淵さんは保育園を運営していたこともあり、日本子育て包括支援推進機構に問い合わせをしてきてくれたのです。

 東レ建設も複合施設の中に子育て支援に取り組む施設を設けるべきだと考えたのでしょう。そこでクレイドルが共同企業体に加わることになったのです。重要なのは産前産後ケアなどの子育て支援に民間企業も積極的に参画していくべきだということです。そのためには実例を示さなければなりません。

 ─ その意味で武蔵小杉は実例の1つとなり得ると。

 長 そうです。やはり社会が核家族化し、晩婚化や若年妊娠などが増え、妊婦の心身のケアを行うニーズは確実に増えていきます。そのニーズを満たすためには、どうしても民間企業の力が必要になります。

 ある大手不動産会社が運営するホテルの一角で産後ケアを始めたケースがありました。その会社が考えていたのはホテルの空室を利用するというものでした。それは国が考えている産前産後ケアとは目的が異なります。

 政府が多額の予算を子育て支援につけたと言うけれども、実際の普及は難しいと思うのです。一方で武蔵小杉のケースは法律の趣旨に則って民間が専用施設をつくり、24時間運営をするわけですから注目されます。

 現在、企業主導型保育事業に約4400の企業が進出しています。今後は「企業主導型産後ケア事業」が展開されるべきと思います。保育所との連携も重要となります。

 ─ 民間に委託する意義が出てくるわけですね。そういった啓蒙活動も行うのですか。

 長 ええ。産後ケア施設の設置は全国の自治体に対して努力義務が課されています。全国1700の市町村は今後、努力義務となった産後ケア施設の設置を一気に進めていくと考えられるわけです。そうすると、産後ケア施設は24時間営業ですから、その経営は民間事業者に委託されることが予想されます。大企業こそが人材確保の観点から直接的にも間接的にも乗り出しています。

 そして、つくばセントラル病院のように病院で産前産後ケア施設を運営するケースもあります。福島先生が強調しているのは大企業の協力です。これがなければ難しいとも言っておられます。もっと多くの企業関係者に知っていただきたいと考え、6月29日には官民協働の産後ケア施設開設に向けたトップマネジメントセミナーを開くことにしました。

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