2023-05-30

長隆・日本子育て包括支援推進機構代表理事 「産後ケア施設は収益性が高い。民間企業はどんどん進出すべきです」

長隆・監査法人長隆事務所代表(日本子育て包括支援推進機構代表理事)



企業への啓蒙活動

 ─ 具体的にどのような内容のセミナーになるのですか。

 長 まずこのセミナーでは官民協働による産後ケア施設の開設に向けて必要なことや産後ケア施設の管理の実態はどうなっているのか。また、産後ケア施設を開設するための資金計画の実態を解説します。加えて、産後ケア施設認定&産後ケアプロバイダー資格認定も行います。国からの補助は多額ですが、公平なバラマキに終止する懸念があり、地方自治体が決断しなければ国の残り2分の1は補助しません。

 このセミナーに参加することによって、大企業や自治体の関係者にとっては産後ケア事業についての理解が深まるでしょう。産後ケア施設の開設、運営のノウハウも手に入ります。さらには専門家である産後ケアプロバイダー研修についても紹介することができます。

 ─ その道のプロが講師を務めるということですか。

 長 その通りです。福島先生をはじめ、先ほど申し上げたヴィタリテハウスの施設長で、助産師・保健師・看護師でもある濵脇文子さん、防衛医科大学校名誉教授・大学医師会長の古谷健一先生、そして私も資金計画のセッションで登壇します。ヴィタリテハウスという実例を引き合いに出しながら産後ケア施設への関心を高めていただきたいというのが狙いになります。

 ─ 成功する産後ケア施設づくりにつながりますね。

 長 それを期待しているところなんです。看護師や助産師を育てる学部を持つ大学にとってもメリットはあります。大学も実習施設は持っていません。その点、ヴィタリテハウスで経験を積むことも可能でしょう。ですから看護師や助産師といった人づくりにも貢献できるのではないかと思っています。

 ─ 人手不足が産業界でも深刻な課題になっています。

 長 そうですね。全国には看護師が約120万人、助産師が4万人ほどいると言われていますが、助産師の中には産後ケアをやってみたいという人が結構多いのです。お産はどうしてもリスクが付きまとうのですが、産後ケアであれば産婦人科病院で出産した妊婦さんをしっかり看れば良いわけですからね。

 ただ、産後ケア施設をつくろうとすれば、それなりの資金もかかりますし、助産師ですから集客するためのマーケティングのノウハウも持ち合わせていません。そういったところは企業の資金やノウハウを活用できれば助産師も本業に集中することができるはずです。

 ─ 海外では産後ケアに民間企業が参画しているケースが多いと聞きますが。

 長 その通りです。台湾や韓国、中国では産後ケアが普及しており、民間が参入して普及の後押しをしているのです。一方でなぜ日本では普及しないのか。文化が違うと言ってしまえばそれまでなのですが、そこが一番大きな違いかもしれません。

 しかし、文化の違いではなく、行政が助産師会に丸投げの構造が、そもそも普及を妨げています。台湾などでは妊婦が産後ケア施設に入所するのが当たり前になっていると聞きます。

 ─ 海外の事例を見て産後ケア施設も収益が上がる施設だということが分かれば、日本でも民間の参入を促せますね。

 長 そう思います。ですから、ヴィタリテハウスが収益の上がる施設になれるかどうかが分岐点になると。産後ケア施設で収益が上がることが分かれば徐々に広がっていき、やがて他国のように文化として根付いていきます。ヴィタリテハウスでは7部屋あるのですが、そのうちの6部屋は自由診療なんです。補助金を前提と考えては事業になり得ません。

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