2024-03-05

三井住友FG新社長・中島達の「課題解決型ビジネス」「国内基盤再強化、そしてアジアで勝負!」

中島達・三井住友フィナンシャルグループ社長

「会社の勢いをさらに強いものにしていく」─こう力を込めるのは、三井住友フィナンシャルグループ社長の中島達氏。グループを牽引していた前社長の太田純氏が2023年11月に病気のため急逝。その後を受けた中島氏は「思いは太田と同じ」と話し、路線継続とさらなる拡大を誓う。国内では課題とされてきた大企業取引や資産運用、海外ではアジア市場の深耕など、中島氏に課せられた課題は重い。

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「本命」として登板 さらなる成長を

「太田(純・前社長)の強いリーダーシップもあり、社内に強いモメンタム(勢い)も出てきている。私のやることは、このモメンタムを維持、向上、さらに強いものにしていくこと」と話すのは、三井住友フィナンシャルグループ社長の中島達氏。

 三井住友FGでは、2019年に社長に就任し、グループを牽引してきた太田純氏が23年11月25日、膵臓がんのために急逝した。65歳だった。

 中島氏は、それを受けて23年12月に急遽登板。だが、若手時代から旧住友銀行と旧さくら銀行の経営統合を始めとする数々の重要案件に関わるなど、かねてから次期社長の「本命」と見られてきた存在。

 太田体制は外部環境が少しずつ改善し、成長を志向できる状況下でスタートした。それ以前は、例えば「バーゼルⅢ」の最終化など国際的金融規制の強化で、日本の金融グループはリスク資産が増えることが懸念されており、それに備えて資本を蓄積することが求められた。

 また、16年4月には日本銀行による「マイナス金利」が導入され、その影響による収益力の低下をどう防ぐかといった「守り」の時代が続いていた。

 その中で資本を蓄積し、マイナス金利下でも再成長できる土台を築いてきた中で、社長に就いたのが太田氏だった。この流れを受けて太田氏はグループ内に「成長を目指そう」と号令をかけた。

 太田氏の路線は、グループ各社の成長にとどまらず、その事業領域の「間」、あるいは金融の「外」にまで成長可能性を求めるものだった。

 太田氏が就任した19年、中島氏はCFO(最高財務責任者)兼CSO(最高戦略責任者)に就き、まさに太田体制での戦略を描く立場になった。ここで太田氏と議論しながら、グループの2030年のビジョンを策定。それが「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」というもの。

 この「グローバルソリューションプロバイダー」に「意図が入っていた」と中島氏。1つは「グローバル」。世界で発展、成長し、プレゼンスのあるプレーヤーになるということ。そしてもう1つ、「グローバルな銀行グループ」ではなく「ソリューションプロバイダー」としたこと。顧客、社会の課題解決に役立つ上で、金融という枠に必ずしもこだわる必要はないということで、あえて掲げた。

「この思いは、私も太田と同じ。太田がやってきた路線を、より力強く進めていく」と中島氏は力を込める。

 地政学リスクや欧米、日本の金融政策の先行きが注視される中、日本では24年に入り日経平均株価が大きく上昇するなど数値面では悪くない状況となっている。中島氏は日本経済の今後をどう見通しているのか。

「日本は成長率は高くないものの、GDP(国内総生産)が着実に成長するし、企業の活動も活発化している。コロナから回復して、企業は今後頑張らなければいけないというセンチメント(心理状態)になっている」と中島氏。

 日本ではカーボンニュートラル(脱炭素)に向けた取り組みなどで企業の投資が活発化している他、東京証券取引所が上場企業に対して「株価とコストを意識した経営」を要請する中、特にPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が、その改善に乗り出している。日本の半導体産業を復活させようという取り組みも進む。中島氏は、こうした動きは少なくとも来年まで続くと見る。

 足元では物価上昇に実質賃金が追いついていないが、賃上げの機運も高まる。これによる消費の活性化も期待される。

 世界に目を転じると、「アメリカ経済は本当に強い」と中島氏。オフィスなどCRE(Corporate Real Estate=企業不動産)の不良債権化のリスクなどはあるものの、消費など経済全体は底堅いものがある。

 欧州経済が持ちこたえているのも好材料だが、「心配は中国」(中島氏)。景気悪化の中で構造改革がうまくいくかが問われる。ただ、共産党体制を維持するために政府に財政出動の余地があるため、大崩れはしないのではないかという見方。

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