2024-03-05

三井住友FG新社長・中島達の「課題解決型ビジネス」「国内基盤再強化、そしてアジアで勝負!」

中島達・三井住友フィナンシャルグループ社長




「金利が付く時代」をどう見通しているか?

 市場では今、日本銀行のYCC(長短金利操作)やマイナス金利の解除が予想されており、日本でも「金利が付く時代」の到来が見通されている。金融グループのトップとして、これをどう見ているのか。

「まずグループの業務にとってインパクトがあるのは、預金が利益の出る商品として復活すること」

 中島氏が旧住友銀行に入行したのは1986年のことだが、当時の新入行員の仕事は預金集めだった。そこで集めた預金を原資に、企業など資金需要のある先に融資するのが銀行の仕事だからだ。金利がつかない中では機能が低下していたが、その機能が戻る可能性がある。

 ただ、「預金にも2つの種類がある」と中島氏。それが「貯蓄性預金」と「決済性預金」。

 今、三井住友銀行にある預金のうち、多くが普通預金、当座預金に置かれているが、金利が1年定期で例えば0.5%などになれば定期預金に向かい、国債が1%になれば国債に向かうことが想定されるなど、より金利が高い先に自在にシフトしていく可能性が高く、この分野が大きな収益源となるかは不透明。

 一方、重要視しているのが決済性預金。「ここをどう確保していくかが今後の勝負」(中島氏)。三井住友FGが、そのための武器としているのが23年2月に個人向けの金融・決済のフルモバイルサービスを実現する「スーパーアプリ」として導入した「Olive(オリーブ)」。

 銀行口座、クレジットカード、オンライン証券をサービスとして組み込んでおり、これを活用してもらう中で、一定量の預金が三井住友銀行の口座に置かれることになる。こうした「粘着性」の高い預金を伸ばすことを目指している。これによって収益力向上を戦略的に進める。

 法人でも同様に、当座預金に置かれるような「粘着性の高い」預金を重視する。そのために進めているのが「決済サービスの高度化」。特に、三井住友銀行が強い中堅・中小企業領域では、「まだ日本全体でサービスが整っていない。ここにチャンスがあるのではないか」

 具体的には、個人向けにおける「Olive」のような、人の手を介さない法人向けの「デジタルプラットフォーム」を構築し、企業に様々な決済手段を提供することを目指す。

 中でもカギを握るのが「クレジットカード」。三井住友FGはグループに三井住友カードという日本トップクラスのカード会社を持つ。日本ではこれまで法人のクレジットカード利用が少なかったが、今後は伸びてくると見ている。

 大企業向け取引は、発足時から三井住友銀行の課題とされてきた。成り立ちから三菱UFJ銀行、みずほ銀行に一日の長があったのは事実。

 中島氏は社長就任直前、ホールセール事業部門共同事業部門長として、大企業向け取引の陣頭指揮を執ってきた。その経験から「今の我々は非常に頑張っているのではないか」と評価。

 社内で調べたところ、3メガ体制が構築された当時、大企業向け貸金残高で三菱UFJ、みずほに水を開けられていた。それが足元では「いい勝負」ができるところまで差を詰めた状況になっている。

「この20年間で差を詰めてきた。ただ、中堅・中小企業は胸を張ってナンバーワンと言えるが、大企業向けはそうではない」

 首位に向けての課題は、グループのSMBC日興証券の機能強化。SMBC日興は「相場操縦事件」などの不祥事があり、この2年間、事業が停滞していたが、ようやく平常化。強化されたガバナンス体制を前提に、今一度、銀行とも連携して法人向け業務の強化を進める。

 さらに、業界ごとの知見、知識を強化して、顧客企業の戦略に入り込み、提案できる力を付けていくことも課題。

 また、「金利が付く時代」においては資産運用が活発化する可能性が高い。その中で三井住友FGは他のメガバンクのように大手信託銀行、大手運用会社を傘下に持っていないという課題があるが「そこで戦っても仕方がない」と中島氏。

 これまで日本の運用業界では、顧客が求める商品よりも、販売サイドが売りたい商品を運用サイドにつくらせて、強い営業力で販売するというやり方が目立った。

 その時代に逆戻りさせないために、三井住友FGは運用会社と販売会社との間に、現日興グローバルラップを母体とする統括会社を新設し、「司令塔」の役割を担わせる方針。これによって「投資家の方々に最高のサービスを提供する。それが資産運用に関する当社の答え」。

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