「次の時代をつくるのは新しい世代だ」
─ 清明さんは社会人人生を三和銀行(現・三菱UFJ銀行)からスタートしていますが、金融を選んだ動機は?
清明 銀行は自分自身のキャリアプランにおける可能性を狭めず、広げてくれる会社だと思ったんです。
─ 01年の入行ですから、日本の金融危機の最中でしたね。
清明 もう混乱が始まっていましたね。入行した翌年にはUFJ銀行になるなど、銀行の統合も進んでいきました。ただ、そのことをあまりネガティブに捉えていませんでした。
変化がないと成長はないと思っているんです。会社も人間も同じことをしていると必ず誰かが追いつき、追い越していきますから、変化し続けることが必要です。
私は小さい頃から、好奇心が旺盛なタイプで、多くの習い事をしては「極めたな」と思ったら次のことに取り組んでいました。いろいろなものを吸収しながら自分をアップデートすることが好きなんです。そうしたことが銀行に入ればできるのではないかと思っていました。
─ 23年10月にNTTドコモと提携し、マネックス証券を連結から切り離す決断をしましたね。清明さんが主導した取引だと聞いていますが改めて、決断の背景を聞かせて下さい。
清明 この話がうまくいったのは、両社のタイミングがちょうど合ったということですが、松本(大・マネックスグループ会長)は交渉も含めて、お相手との場に出たことはありません。基本的に、私とチームで交渉を進めてきました。
私が松本のことをすごいなと思ったのは、祖業であるマネックス証券の株式を半分売却し、連結から外すという決断に対し「ノー」と言わなかったということです。
マネックスは、広く多くの人にマネックス証券を利用してもらい、投資をしてもらって人々に豊かな生活をしてもらうという「投資の民主化」を理念に始まった会社です。
ドコモとの提携で、この理念が実現できるのではないかと考え、創業者である松本は、この提携をいいものだと判断したと。実際、「会社が成長するし、理念の実現にもつながる。マネックスらしさが残るのであればいいのではないか」と言ってくれました。こういうことを言える創業者がいるというのは本当に恵まれているなと感じました。
─ 23年6月に、その松本さんからCEOを託されたわけですね。
清明 松本は「次の時代をつくるのは若い世代だ」として、私にバトンを渡してくれたのですが、そうした発想をする人も少ないのではないかと思っているんです。松本自身がまだ60歳ですから、全然元気ですし、まだまだできるけれども、未来をつくるのは若い世代だと。私自身、そうした発想が好きで、マネックスにお世話になって15年が経ちました。
ドコモとの提携は、単に我々の理念を成し遂げるためだけではなく、金融界を変える、変革できるのではないかという話ですから、非常に大きな意味があると思っています。