2024-03-06

清明祐子・マネックスグループ社長CEO 「NTTドコモとの提携で、投資をより生活に身近な存在に」

清明祐子・マネックスグループ社長CEO




NTTドコモと提携した理由は?

 ─ 新しい金融をつくっていこうという時に、ドコモをパートナーに選んだ理由は?

 清明 ドコモは通信会社というより、生活に密着した「プラットフォーマー」だと思っています。

 通信からスタートしているのでキャリアのイメージが大きいかもしれませんが、今は「d払い」や「dカード」などのペイメントサービスやポイントサービスを手掛け、人々が毎日触れ、生活、経済を支える事業を進めておられます。携帯電話もその1つと言えます。そして「dメニュー」などのコンテンツも手掛けています。

 私達は投資の民主化を目指していますが、「貯蓄から投資へ」は金融から金融であり、お金を銀行に置くか、証券に置くかという話だと思うんです。

 そうではなく「消費や生活と資産形成」という形にしていきたいんです。それが政府が掲げている資産所得倍増プランが目指すものだと思っています。生活の中にどれだけ資産形成を組み入れていただけるかが、今の日本では非常に大きいと。ですからドコモは、携帯の会社ではなく、日々の生活を支えておられる方々と捉えました。

 ─ 日本の個人金融資産が2100兆円ある中で、現金・預金が1100兆円。この活用が問われます。

 清明 ええ。NISAの口座も、まだ約2000万口座しかありません。一方、ドコモには約9600万の会員がおられます。これを見てもわかるように、まだまだ資産形成を始めておられない方々がたくさんいるということです。

 そうした方々に気軽に、安心して資産形成、投資を始めていただける仕事をしようと思う時に、どうしても証券会社は「外側」の存在なんです。少し敷居が高いとも思われています。銀行サービスの方が生活に近いのだと思います。

 24年1月4日から、イオン銀行との提携も始まっています。イオンのお客様はファミリー層が多いですが、そうした方々のための資産形成を進めていきたいんです。イオンでの消費のそばで「資産形成はどうですか?」という形で生活圏にリーチしていきたい。

 おそらく資産形成をしていかないと年金の問題、長生きリスクが出て来ます。資産寿命が自分の寿命よりも長くないと、安心して暮らしていくことはできません。ですから今の日本に資産形成が必要なんです。

 ─ 投資をより身近な存在にしていこうと。

 清明 資産形成はお金の話というよりは生活の話だからです。日本ではお金の話をすることはタブー視されている面がありますが、生活の話ならばできるのではないかと。皆さんの生活を豊かにするために、マネックス証券のサービスはいかがですか?という世界にしていきたい。

 24年は新NISAも始まり、制度面で政府が後押ししてくれていますが、我々はドコモ、イオン銀行と組ませていただいてもいるので、本当に楽しみです。24年は歴史を変えるスタートの1年だと思っています。

 大きいゴールかもしれませんが、ゴールがなければ、みんながそこに向かうことができません。私達は金融業界を変える変革者なのだと思い込むことが大事かなと思って、取り組んでいます。

 ─ 今後のマネックスグループをどういう会社だと位置づけて運営していきますか。

 清明 私達の強みは多様性があり、テクノロジーを自分達で持っており、そしてグローバルであるということです。金融はインフラというイメージがあると思いますが、私達はサービス業でありたいと思っています。そしてそれをグローバルに展開していきたいのです。

 また、暗号資産を手掛けるコインチェックも傘下に持ちますが、新たなデジタル経済圏が生まれる時のゲートウェイになるかもしれません。

 その意味からも、金融の枠組みを少し超える形で、人々の豊かな生活をグローバルで支えていく集団という形にしていきたいと思っています。

 ─ 今後も他企業との連携は考えていきますか。

 清明 私達はM&Aで大きくなってきた会社です。買収だけではなく提携も含めて、私達の理念に沿うようなゴールを描けるのであれば、いろいろな方々と提携していきたいと思います。

 ─ いずれにしてもスピードが大事ですね。

 清明 大事です。スピードを持って決めて、実現に向けて動く。その繰り返しですね。

 CEOに就くと守りに入りたくなる人もいると思うのですが、私は意外と攻めの人間です。オーガニックな成長だけでなく、みんなと一緒に新しい世界をつくるためのジャンプをしたいんです。

 私達のチームならば非連続な成長を実現できると思って取り組んでいます。

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