野党の政策でもOK
一方、野党は国会で見せ場を作れていない。政策の「朝令暮改」をためらわないのが岸田の特徴だからだ。先述した10万円相当の給付問題で、立憲民主党は、離婚して子どもを養育している一人親にも給付が確実に届くようにする法案を今国会に提出した。
すると岸田は1月24日の衆院予算委員会で「(1人親が)受け取れないという声もしっかり聞いている」と「聞く力」をアピールし、「不公平を是正し、給付金が届くよう国として見直す」と答弁した。質問したのは立憲ではなく自民党幹事長代理の上川陽子。上川自身が後で「あそこまで踏み込むとは」と驚いたほどで、岸田は立憲の政策をちゃっかり拝借した。
同じころ、連合の参院選に関する基本方針案が波紋を広げた。「厳秘」扱いの素案は、選挙区選挙で「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しないという姿勢を明確にする必要がある」と提起し、1人区での共産党との選挙協力に事実上のノーを突きつけた。しかも、支援する政党を明記せず、連合本部が「立憲民主党、国民民主党との必要な調整にあたる」とするにとどめた。会長の芳野友子の考えを色濃く反映した素案と言える。
折しも、岸田政権は連合との間合いを詰めている。1月の新年交歓会に岸田は自民党の首相として9年ぶりに出席。春闘での賃上げに期待を表明し、参院選に向け「ぜひ政治の安定という観点から与党にも貴重なご理解とご協力を」と余裕たっぷりに呼びかけた。
とはいえ、新型コロナの感染急拡大に伴い、岸田内閣の支持率には変調の兆しがある。毎日新聞の1月22日の世論調査によると、内閣支持率は52%で昨年12月の54%から微減。共同通信の22、23両日の調査では55・9%と前回から4・1ポイント下落した。どちらの調査も政府の新型コロナ対策を「評価する」が目減りしており、今後の支持率の推移は対策の実効性にかかっている。
まん延防止等重点措置は1月27日に34都道府県まで拡大した。第5波と第6波の合間に誕生した岸田政権は本当の意味で自立できるか、まさに正念場だ。(敬称略)