2022-02-24

【政界】「聞く力」で第6波にも対応した岸田政権の留意点

イラスト・山田紳

※2022年2月22日時点

新型コロナウイルスの感染が拡大する中にあって、首相の岸田文雄は安定的な政権運営を続けている。連日のように新規感染者数が過去最高を更新したことに加え、ワクチンの3回目接種の遅れ、検査キットの不足といった負の要素があるにもかかわらず、内閣支持率に大きな変動はない。コロナ禍で支持率を減らし、最終的に退陣した安倍晋三、菅義偉両政権とは異なる傾向だ。「聞く力」を掲げる岸田の人柄も影響しているようだが、約4カ月後に公示を控えた参院選を見据えると、足元は依然おぼつかない。

【政界】安全運転の岸田政権に初めての試練 新型コロナ対策誤れば下り坂の危機

感染拡大でも高支持率

「岸田さんらしくない。『常に最悪の事態を想定し、国民の命と健康を守り抜く』と何度も言っていたのに……」

 こうつぶやくのは岸田に近い自民党議員だ。ため息の理由は、コロナ対策で「先手」の対策をとると訴えてきた岸田政権の下、感染拡大がとまらないためだ。

 新規感染者数は1月18日、第5波のピークだった昨年8月20日の2万5990人を上回る3万2000人超となり、過去最高を更新。その後も増加の一途をたどり2月5日には10万人を突破した。

 政府の不手際も目立ってきた。3回目のワクチン接種は昨年12月に医療従事者らを対象に始まったが、2回目接種からの期間を一般の人は「8カ月以上」としていたこともあり、遅々として進まなかった。

 その後「6カ月以上」に変更し、遅れていたワクチンの調達、接種加速のための自治体支援などに取り組んだが、3回目接種率は2月2日にようやく4%に届いた程度だ。

 海外では、イスラエルで昨年7月の時点で3回目接種が始まり、接種率50%を超える国が相次ぐ。3回目接種が浸透し、さまざまな規制を解除した英国のように「ウィズコロナ」を実践する国もある。岸田は今月7日、「2月のできるだけ早い時期に1日100万回を目指す」と述べたが、遅きに失した感がある。

 政府は当初、オミクロン株の市中感染が確認された地域への抗原検査キットの無料配布を打ち出した。ところが感染者拡大に伴いキットは品薄に。厚生労働省が1月下旬、医療機関への配布を最優先にする措置をとった。

 感染者の濃厚接触者の待機期間も当初は14日間だったが、感染者の増加に伴い濃厚接触者も増えたため、介護や保育といったエッセンシャルワーカーの活動や、警察、消防といった社会機能の維持が危惧される事態に発展した。

 岸田はその後、待機期間を10日→7日と短縮した。関西地方の市長は「首相は『聞く力』を発揮してくれたが、だったらもう少し早く決断してくれればいいのに」と嘆く。

 とはいえ、デルタ株が席巻した第5波と比べ、第6波の要因であるオミクロン株は感染拡大が早いものの、重症化はしにくいとされ、医療態勢も全国的に逼迫とまではいえない。東京をはじめ、各地で蔓延防止等重点措置が適用されたが、国民の「慣れ」もあるのか、「岸田政権に打撃」との雰囲気にはなっていない。

 報道各社の世論調査にもその傾向がみられる。たとえば朝日新聞が、感染者が過去最高を更新した後の1月22、23両日に行った世論調査の内閣支持率は前月と同じ49%だった。日経とテレビ東京の調査(1月28~30日)では59%で、前月比で6ポイント下がったものの、高支持率には違いない。

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