2022-03-08

【オリックスってどんな会社?】オリックス社長・井上亮の変化対応論「多様なポートフォリオ戦略をいかに作るか」

井上亮・オリックス社長兼グループCEO

全ての画像を見る


コロナ禍での気付き


 改めて、コロナ禍で気付いた事とは何か?「コロナで気付いたのは、無駄が多かったなということですよね。わたしは2年間海外出張へ行っていないんですよ。でも、何とかなっている。ズームとかで会議もできていますしね。もちろん、真剣な、デリケートな会議は難しいですが、それ以外はウェブできちんとできる」

 オフィスのスペースも、コロナ危機の中で、随分と無駄遣いに気付かされたという。

 例えば、東京本社オフィスは東京・浜松町の世界貿易センタービル南館に昨年6月に引っ越し。「このオフィスもコロナ危機前に契約したものですが、事前に考えていたのとは使い方が変わっています」と井上氏。

 コロナ危機下で悩ましいのは、リモートワークになって、社員の間で、「疎外感というか、孤独感を抱く人がいる」ということである。

 産業界では、新入社員は入社早々、リモートワークで在宅勤務になり、「せっかく入社したのに、仕事の手応えが感じられない」といった理由で辞表を出すケースも散見される。同社でも似たケースがあったという。

 リモートでの会社からの指示と在宅勤務している社員の提案がうまく嚙み合わないケースもある。リアルな働き方と、ウェブの活用との融合をどう図っていくかは引き続きの課題。

 多様な事業を抱える同社には、コロナ禍で多大な損失を被った事業もある。航空機リース、関西国際空港の運営事業、そして旅館・ホテルの宿泊事業の3つは特に損失が大きい。

 この3つの事業による損失は、税前利益で約900億円にのぼるから痛い。

 航空機リースは赤字がほぼ解消するなど好転の兆しもある。関西国際空港は、同社とVinci Airport(ヴァンシ エアポート)を中核に設立された関西エアポートが2016年4月から運営している。神戸空港も関西エアポート神戸の運営によるもので、オリックスグループは関西、伊丹、神戸の3空港運営を担っている。

 インバウンド客の消失で厳しい環境にあるが、昨年末と年始は通常の7割方の乗客が戻ってきていた。オミクロン株の感染流行が落ち着けば、一定程度の回復が期待される。

 一方、コロナ前はROA(総資産利益率、会社の総資産を利用してどれだけの利益を上げられたかを見る数値)が低い─として、井上氏が叱咤激励してきた生命保険や銀行部門はコロナ禍でも安定した収益を生んでいる。

 生保や銀行部門はネットの活用で成績を上げているのだ。「生保、銀行は少し考え直そうと。今、マーチャントバンキングとかプライベートバンキング(富裕層相手の資産運用など総合コンサルティング業務)、それにインベストメントバンキングの仕事を増やして欲しいと言っています」

 コロナ危機で各事業の立ち位置が変わってきた。改める領域はまだまだあるということ。

本誌主幹・村田博文

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事