2022-09-14

【変化対応の経営】大和ハウス工業・芳井敬一社長が語る「経営基盤強化に大事なのはガバナンス。やはり決め手は人材投資」

芳井敬一・大和ハウス工業社長



米国の人口増加地域を開拓して…


 ─ 現在の大和ハウス工業は事業が多岐にわたりますが、まず基礎である住宅事業を今後、どう進めていきますか。

 芳井 住宅事業は、2年前からすでに利益は海外の方が上回っています。22年3月期決算でも、円安があったとはいえ、海外の需要を強く捉えています。これは明らかに人口が増える場所で事業を行っているからです。

 日本の22年の新成人が約120万人とされ、一方で新生児が約80万人ですから、40万人減っているわけです。この傾向が続くと、我々の住宅を買い、賃貸住宅を借りる人達が大きく減ってしまうのです。

 80万人しか生まれていない人を、突然100万人にすることは不可能で、そこは国の政策ですから、それは置いておくとして、我々の住宅事業のフィールドにおける新築は、人口にすぐには比例しないけれども非常に厳しい姿が見えてきます。

 そうなるとリフォームなどを組み合わせながらご提案をしていく必要があります。同時に海外比率を高めなければなりません。当社は13年、14年頃に米国で戸建て住宅事業を手掛けるスタンレー・マーチン社と交渉を始め、グループ入りしたのが17年のことです。

 今、多くの日本企業で海外事業の重要性が叫ばれる時代ですが、当時からワシントンD.C.を中心に米国のスマイルカーブ地域(北西部のシアトルから南部のヒューストン、北東部のワシントンD.C.にかけての人口増加が顕著な地域)を育てていこうと言ってきたわけです。

 おかげ様で米国で東西の体制が整い、ヒューストンで住宅事業を展開する企業もグループ入りしました。まさに13年頃から考えてきた、人口が増加するスマイルカーブ地域を開拓する配置ができたということです。この正しさを裏打ちするように、日本の他の住宅メーカーさんも、スマイルカーブ開拓を始めました。我々としては先を行っていてよかったというイメージがあります。

 ─ 短期間で米国事業が軌道に乗りつつあるということだと思いますが、この要因は?

 芳井 1つは、スタンレー・マーチン社の経営者と相当話し合えたことです。単にM&A(企業の合併・買収)をします、会社を売りますという話ではなく、お互いに話し合う中で信頼関係ができたんです。その結果、米国での住宅事業について、彼らのアドバイスをもらいながらできたことが大きかったと思っています。

 ─ 14億人の人口がいる中国はどう考えますか。

 芳井 中国の方々は、両国の政治的関係とは別に、日本的品質、日本の商品を世界で最も評価して下さっていると思っています。その意味でも我々の役割は高品質の住宅を提供することです。

 現実に、中国で住宅が売りづらい地域でも、大和ハウス工業のマンションだけは出せば売れるという状態になっているのは、日本的品質、日本式の管理を評価して下さっているのだろうと思っています。我々にもまだまだチャンスがある市場です。

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