2022-09-14

【変化対応の経営】大和ハウス工業・芳井敬一社長が語る「経営基盤強化に大事なのはガバナンス。やはり決め手は人材投資」

芳井敬一・大和ハウス工業社長



資材高騰には特効薬はない


 ─ 国内の物流事業はネット通販の活況もあって注目されていますが、どういう位置づけになりますか。

 芳井 この第7次中計で最も投資するのは物流事業です。このセグメントには「データセンター」もあり、これも注力していますが、やはり投資の大半は通常の物流センターです。現在の計画では少し投資金額が足りないかもしれないと思っているところです。

 eコマースの世界の進展は今後も続くだろうと見ています。ですから物流センターへの投資も続きますし、予想以上にデータセンターへの引き合いも強いんです。我々が様々な不動産を所有し、またそれを提供し、建築していくという流れは変わらないだろうと見ています。

 ただ、懸念点を挙げるとすれば、やはり右肩上がりの資材の高騰です。

 ─ この資材高騰は日本産業界全体の課題ですが、どう考えていきますか。

 芳井 多くの人に「元に戻る」、「また安くなる」という心理がどこかにあるんだと思います。資材の仕入れ価格は上がっていますが、こうした消費者の見方によって、住宅の購入も「模様眺め」が出ていると思います。

 ただ、今回の資材高騰は質が違います。特効薬がないくらい自動的に上がっています。そして電力、ガスの不足が続き、価格も上昇している。これをどう転嫁していくか。

 昔であれば「すでに価格を上げているのにおかしい」と言われましたが、今はまだ抑えている段階です。ですから、各企業の23年3月期決算を見た時にどう見えるかですね。

 ─ こうした状況下で賃上げも進めるべきだという意見も出ています。

 芳井 CPI(消費者物価指数)に連動するべきだと思います。自身の可処分所得を考えた時に、賃金が上がらなければ減ってしまいますから。そこは各企業が、様々な形で努力をして賃金を上げていく必要がありますし、我々も上げています。

 ─ ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立など地政学リスクがある中ですが、今後も企業はグローバル経営を続けていかなくてはなりませんね。現在、大和ハウスグループの海外事業の売上高比率はどのくらいですか。

 芳井 足元では約10%です。これを第7次中計では2割近くに高めようとしています。

 以前、欧州でIR(投資家向け広報)をした時に、投資家から「御社の海外事業は急成長していますね」と言われました。足元で海外売上高が約4400億円、5年後には1兆円を目指す計画です。しかし、元々09年頃の売上高は9億円程度でしたから約500倍に成長しました。

 ただ、そこで私が説明したのは「積み上げてきた」ということです。突然、何かを買って大きく増やしたのではなく、ずっと積み重ねてきたのだと。スタンレー・マーチン社も17年にグループ入りして、ここまで育ててきたのです。

 ─ いずれにしろ、海外市場がますます大事な時代だと。

 芳井 ええ。その一方で、国内では未来に向けて、当社が開発してきた住宅団地「ネオポリス」を再び耕す、再び輝かせる仕事「リブネスタウンプロジェクト」を続けていきたいと考えています。

 我々は街に戻って、住心地はどうか、空き家の問題、家をリフォームしたいといった、皆様の困り事をご相談していただけるような立ち位置に戻ろうと。

 ─ 人と人のつながりが薄くなったと言われる昨今ですが、これを取り戻すきっかけになるような事業ですね。

 芳井 そう思っています。例えば先日、報告を受けたのですが、今スマートフォンなどでテレビ電話ができますが、離れたところにいるお子さん、お孫さんと話すために使うものだと思われていますよね。

 各地のネオポリスでも当然、そうした使い方をされている人が多かったわけですが、今は街の住民同士でテレビ電話をしているというんです。街の中で人とのつながりを求めておられるということです。そうしたコミュニケーションを生むような街にしていきたいと思います。

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