2022-10-28

世界が混沌とする中、経営者に求められる覚悟─ キヤノン・御手洗冨士夫の その国の文化、民族性に合わせた人事・雇用を!

御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長CEO

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モノ不足インフレにどう対応するか


「確かにグローバリゼーションが一番初めに崩れかかったのは、労働問題、雇用問題ですね。英国がEU(欧州連合)から離脱したのも、移民が押し寄せ、今まで職に就いていた人たちが仕事を失い、不平等だということで反発が起きた。旧植民地から大変な勢いで移民が押し寄せ、仕事が奪われてしまった。そうしたグローバリゼーションの負の局面が出だした頃に、パンデミックが起こって、人の行き来は制限された」

 御手洗氏が続ける。
「国の中でもマスクをさせられて、操業停止になる会社もあるし、中国や東南アジアの弊社の工場も止まったりしました。サプライチェーンは分断されるし、物流機関、交通機関の仕事も滞った。その結果、供給不足になり、随所でモノ不足現象が現れ、モノ不足インフレが起こった。これは今でも続いています」(インタビュー欄参照)

 モノ不足で資源・エネルギーや原材料価格が上昇し、コスト・プッシュ・インフレへの懸念も生まれる。
 こうしたコストアップを製品価格に転嫁する動きは欧米で進むが、日本ではそう簡単にはいかない。
 消費者物価の動きにもそうした各国の国内事情が反映される。米国の消費者物価上昇率8%台、欧州は10%台とまさにインフレ。
 これに対して、日本の消費者物価上昇率は2・6%(8月)と低い。企業物価指数は資源高騰と円安で、9・0%上昇しているのだが、それを最終消費者の段階で価格転嫁できていない企業が相当数あるということ。


二極化現象が起きて…


 御手洗氏はこのモノ不足インフレによって、「日本でも産業界は2つに分かれる」と語る。
 パンデミックは人の外出制限につながり、飲食業界は大打撃を受けた。国と国をまたぐ移動も制限され、航空業界やホテル・旅行業界も深刻な危機に陥った。
 一方で、海運会社は旺盛な物流需要を受けている。年間の営業利益が1兆円に達する企業もある。まさに二極化現象である。
 このコロナ禍の約3年間にキヤノンはどう対応してきたのか?

「一般従業員のボーナスはそのままにしましたが、配当は半分にして、役員報酬も返上してきた。それぐらい(前半は)本当にきつかった。努力して、原材料の調達なんかも努力して、だんだん増収増益になったわけです」

 今回のインフレ、特に日本の場合は、「景気が良くて、過剰流動性が起きてなったインフレではないです。モノ不足によるインフレだから、需給関係がイコールになるまでは続くんです。そう考えると、まだ(この状態は)1年以上続くんじゃないかと思います」と御手洗氏(インタビュー欄参照)。
 モノ不足は当分続き、経営コストは上がり続ける。

本誌主幹 村田博文

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