2022-10-07

YKK社長 ・大谷裕明の混沌の今こそ、創業者 の『善の巡環』思想で

YKK 大谷裕明社長

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「事業とは、橋を架けるようなもの」

 創業者・吉田忠雄は「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」という『善の巡環』を経営思想の根幹に据えた。そして、「事業とは橋を架けるようなもの」と説き続けた。
「わたしは、『善の巡環』にずっと共鳴していたんですが、遂に世の中もそうなるかと思ったのが、サステナビリティ(持続性)の登場です。ちょうど2015年の国連サミットでSDGs(合計17 の持続的成長目標)が提唱され、それからサステナビリティ志向の考えが世の中に広まりつつありますね」

 株主中心主義の経済といわれた米国で、主要百十数社の集まりである『ビジネスラウンドテーブル』が2018年に、企業経営とステークホルダー(利害関係者)との関係を見直した。
「ええ、以前は1番目が株主でした。それを、顧客、従業員、そしてサプライヤー(取引先)、地域社会を掲げたあと、最後に株主だと。これって、われわれが創業以来、言ってきたことと同じことを彼らは言っているんだなと。わたしは内心そう思っているんです」

 機械は常に進化する。その機械を最適なやり方で整備できる腕が必要だし、「世界のどこでファスナーを作ろうと、技術者は必要なんです。それを輩出する役割が『技術の総本山』である黒部だと」と大谷氏は語る。

 ファスナーの95%以上は海外で使われる。日本から技術者や営業関係者も海外へ派遣されるが、根幹技術の現地での応用となると、「絶対ナショナルスタッフにはかなわないです」と大谷氏。
 日本と海外の連携である。
 建材のYKKAPを入れたYKKグループ全体の従業員数は約4万7000人。うちファスナーのYKKは約2万7000人(そのうち日本人は約5000人)という従業員構成。

 内外の連携強化は絶対に必要。
「今年以降、必ず世界の情勢は厳しくなる。圧倒的なコスト競争力をもう一度磨きあげる」という大谷氏の決意であり、経営者としての覚悟である。


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本誌主幹 村田博文

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