2022-10-07

YKK社長 ・大谷裕明の混沌の今こそ、創業者 の『善の巡環』思想で

YKK 大谷裕明社長

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なぜ、今、『森林経営』なのか?

『森林経営』─。創業者・吉田忠雄(1908―1993)は、「YKKは森林です」と語り、「全員が手を携えて、一緒に大きく育っていきます」と説き続けた。
「1つひとつの木々がまんべんなく太陽の恵みを受け、一緒に雨風に立ち向かっていかなければなりません」─。経営幹部と現場で働く人たちとの連携、共生への訴えである。

 経験を積んで年輪を重ねた太い木もあれば、若くて細い木もある。会社組織も同じで、人はそれぞれの個性や得意とする能力を発揮し、共に前進していこうという森林経営である。

数字目標にこだわらず大きな経営の方向を

 YKKの世界での活動拠点は72カ国に及び、グループ会社数は67にのぼる(2022年3月現在)。1社1社で見れば、売上高で200~300億円という所から、小さい所で数億円という国もある。平均すれば60億円台になる。「会社の大小の規模にかかわらず、経営者としての心構えは同じです。大きくても小さくても、彼らは、わたしを含めていい経験を2020年、2021年はできたなと思いますね。それは、創業者の『善の巡環』の体験であり、その創業思想に立ち返るしかないということですね」

 同社は中期経営計画を4年単位で策定。今の第6次中期経営計画は2021年度から2024年度の期限。コロナ禍の直撃を受けるなど環境は激変した。
 実際、コロナ禍1年目の2020年度は前述のように大幅な減収減益。計画は大きく狂った。
「皆がコロナ禍で苦労しているときに、本部は数字が出せるかと。大変な負荷をかけるだけだから、本部は方針だけを決めました。いつもなら、その年の3月に、その次の4年間の中期数値を出し、経営方針説明をするのですが、数字を出さなかった」

 大谷氏はこう述べ、経営の方針として、「こうやりたいという方針の中に、創業思想への回帰を盛り込んだ」と語る。
 混沌とした状況の中で、自分たちの使命と強みは何か? という自問自答。それは創業(1934年)以来続く営み。

「お客様1人ひとりに合わせたOne to One(ワン・ツー・ワン)対応です。それぞれのお客様が展開する新しいビジネスモデルに対応するために、どこよりも優れた商品、技術を開発していく」

 Technology Oriental ValueCreation(技術に裏付けられた価値創造)をはじめ、『商品力と提案力』、『技術力と製造力』、『新しい顧客の創造』などの言葉が並ぶ。
「こういうのはすべて創業思想への回帰なんです」と大谷氏。

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本誌主幹 村田博文

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